レイダリオといえば、いわずとしれた世界最大のヘッジファンドブリッジウォーターアソシエートの創業者です。
世界的な大富豪でもあり、ヘッジファンドの長者番付でも毎年上位にランクインしています。
年により異なりますが、推定の年収は10億ドル程度と推測されています(円ではなくドルです)
このレイダリオ率いるブリッジウォーターのパフォーマンスは長期にわたり良好なことが知られています(だから世界最大になったとも言えます)
レイダリオのポートフォリオは、黄金のポートフォリオもしくはオールシーズンともいわれています。
黄金と聞くと、なにやら凄そうな運用をしていそうですが、根幹の部分は実にシンプルです。
俗にいうリスクパリティ戦略がレイダリオのポートフォリオの基本になっています。
リスクパリティ戦略(オールシーズン)とは
リスクパリティとは、その名の通り保有資産のリスクを等価(パリティ)にする戦略です。
例えばリスク10%の資産Aと20%の資産Bがあった場合には、AとBを2:1の割合で保有するということになります。
リスクが2倍の資産の保有割合を半分にすることで、ポートフォリオに対する影響をAとBで等しくしているわけです。
リスクパリティの種類
このリスクパリティには様々な形があります。
例えば株式のポートフォリオで各個別銘柄をリスクパリティで保有する、マルチアセットのポートフォリオで各資産をリスクパリティで保有する、などです。
レイダリオはグローバルマクロ戦略を主としており、世界中の様々な資産に投資しています。
なので先ほどの例で言うと、各資産をリスクパリティで保有するというのが基本的な構造になります。
なお、リスクパリティについては以下の記事で詳しく解説しています。
参考記事:リスクパリティ戦略の特徴と問題点
オールシーズン(オールウェザー)
リスクパリティは別名オールシーズンやオールウェザーとも呼ばれています。
要するに、どういう局面にも強いということを意味しているのですが、これは各資産のリスクを均等にすることからもわかります。
各資産を経済状況とインフレをベースに4局面に分けます。
そして各局面で活躍してくれる資産を選び、それらの資産をリスクパリティで保有します。
こうすることでどの局面においても、どれかの資産は活躍してくれるので、負けないポートフォリオができるということです(理論上は)
現実はこんなに美しくはないのですが、少なくとも過去の局面においてはよくワークしていた仕組みと言えます。
リスクパリティ戦略がパフォーマンスがよい理由
既に述べたように、リスクパリティ戦略は歴史的にパフォーマンスが良好に推移してきています。
レイダリオはこの良好なパフォーマンスに乗っかってきたと見ることもできます(少なくとも一部は)
リスクパリティのパフォーマンスがよい背景は大きく以下の3つになります。
リスク分散
リスクパリティはリスクの寄与を等しくします。
そのため、各資産のポートフォリオのパフォーマンスへの影響が分散されることになります。
リスクが分散されるということは、シャープレシオで見ると、分母が下がるため全体の数字は上がります。
なお、各資産の相関が0の時、リスクパリティは最適なポートフォリオとなります(興味がある方は計算してみてください)
長期的な金利低下
リスクパリティは各資産のリスクを等しくするため、必然的に債券のウェイトが大きくなります。
歴史的に見ると1980年代以降債券の金利は低下しているため、債券のパフォーマンスは非常に良好でした。
もちろん当該期間の株式のリターンも好調ですが、シャープレシオで見ると債券に軍配が上がります。
この債券をいわゆる株60対債券40のような伝統的な配分に比べると非常に多く保有するため、シャープレシオが非常に高くなります。
レバレッジ回避
ファイナンスの世界では、低ボラティリティ効果というものがあります。
ざっくり言うとボラティリティの低いものの方がシャープレシオが高いという現象です。
なぜこのような効果が生まれるかということには様々議論がありますが、1つの仮説がレバレッジ回避という考えです。
例えばリターンを10%得ようとすると、投資家はリスクが高くても10%の期待リターンの株式に投資しようとします。
一方で、期待リターンが5%の株式に2倍のレバレッジをかければ期待リターンが10%になりますが(ここでは細かいコストは無視)、このような投資行動をとる人は少ないです。
結果として高いリターンを得ようとする人は高いリスクの株に投資をすることになり、このような株は価格が上昇することになります。
価格が上昇するということは、期待リターンが下がることを意味します。
このようなレバレッジを回避する(使わない)多くの投資家の存在が、低ボラティリティ効果の背後にあると言われています。
株式と債券の例で言うと、株式と同じ期待リターンを得るのに、債券にレバレッジをかけようとする人は少ないため、構造的に株式の方が買われすぎの状態にあると言えます。
リスクの低い資産のウェイトを増やす仕組みを持ったリスクパリティは、この低ボラティリティ効果をうまく取り込んでいるといえます。
なお、低ボラティリティ効果の詳細については以下の記事を参照ください。
参考記事:低ボラティリティ投資の特徴
参考記事:低ボラティリティ効果が発生する3つの仮設
リスクパリティだけではない
これまでリスクパリティ戦略の優位性を述べてきましたが、もちろんレイダリオのパフォーマンスが優れているのはリスクパリティだけの影響ではありません。
レイダリオの様々な著書を見ると、特に世界経済を俯瞰的に見る目に関しては、並々ならぬものを感じます。
また、レイダリオが築き上げたブリッジウォーターに関しては、独自の文化が育まれていることが知られており、いわゆる「サラリーマン運用者」とはまるで異なる世界であることがわかります(端的に言うと、非常に厳しい環境です)
近年流行りの機械学習やビッグデータといったものも積極に取り入れており、投資に対する果てしない貪欲さがうかがえます。
早期からリスクパリティ戦略の優位性を認識し、実行してきた先眼も素晴らしいですが、それ以上に投資に対する飽くなき探求心がレイダリオのアルファの源泉ではないかと考えさせられます。
まとめ
レイダリオはリスクパリティ戦略をベースにブリッジウォーターを世界最大の世界最大の運用会社へと押し上げましたが、それだけではありません。
氏の築き上げた投資に対して妥協を許さない企業カルチャーもアルファを創出上で大きな強みとなっていると考えられます。
独特であり、かつ厳しすぎるが故、環境になじめずに早期に辞める人も多いと聞きます。
また、現在ではリスクパリティだけでなく、様々な戦略を提供しています。
そういった意味で、ブリッジウォーターは今やヘッジファンドの総合デパートといった方が適切かもしれません。