バリュー株投資の指標の見方とバリュー株効果が発生する3つの原因

バリュー株バリュー株投資は株式投資のスタイルの中でも最も有名な投資戦略です。

近年ではスマートベータの1つとしても挙げられることもあります

バリュー株投資は平たく言ってしまうと安い銘柄を買う投資ですが、何をもってして安いと判断するかは様々な議論があります。

ここではバリュー株投資の特徴と指標の使い方、そしてバリュー株効果が発生する原因についてご紹介します。

バリュー株投資とは

バリュー株投資を一言で言うと、安い株を買う戦略です。

問題は何をもって安いとするかですが、一般的には以下の2つの指標が使われます。

  • PBR
  • PER

PBRの定義

PBRは株価をBPS(1株当たり純資産)で割って求められます。

PBR=株価/BPS

BPSは1株当たり純資産ですので、理論上は株主の持ち分です。

この株主の持ち分が、価格に対しどの程度評価されているかを示す指標になります。

PBRの解釈

PBRが1倍を割っている時は、株価が純資産を下回っているため、会社の解散価値を下回る価格で取引されているとよく言われます。

しかしながら、実際には純資産は簿価で評価されていますので、現実的にPBR1倍割れの銘柄が解散したとしても、株価以上のリターンが見込めるとは限りません。

つまり、あくまでも理論上の概念ということです。

一方で、PBRが高い場合には、その銘柄はマーケットで高く評価されていることになります。

成長性の高い銘柄であれば、潤沢な利益を生みだし、それが純資産に積み上がっていくため、現在PBRがその将来積み上がるであろう資産を織り込んでいるということです。

このように、マーケットでついているPBRの水準には、それぞれにそれなりの理由があるのです。

PBRが低いほど割安

PBRを株価を評価するための尺度として見た場合、PBRが低い程割安という見方になります。

定義式からわかる通り、PBRは株価が低い程低くなるため、PBRが低い程割安度が高くなります。

純資産というストックに対し、株価がどの程度割安かという視点で見るのがPBRの特徴となります。

PERの定義

PERは株価を1株当たりの利益(EPS)で割って求めます。

PER=株価/EPS

意味合いとしては、株価が1株当たりの利益に対し、何倍の水準まで買われているかを示します。

PERはPBRと同様に、その値が低い程割安度が高いという見方になります。

PERの解釈

例えばPERが20倍の場合を考えます。

この20倍の意味は、

「現在の株価と利益水準を前提とすると、20年で投資が回収できる」

ということになります。

株価が利益の20倍となっているということは、裏を返すと同じ株価と利益が継続すれば、20年で利益と株価が釣り合うということです(あくまでも仮定の話です)

要するにPERというのは、株主に帰属する利益の回収期間を示しているため、回収期間が短い、つまりPERが低いほど割安という見方ができるのです。

PERを使用する際の注意点

PERを見る際には、注意点がいくつかあります。

まずPERを算出する時の利益ですが、基本的に実績値ではなく、予測値を使います。

というのは、基本的にマーケットは予測に基づいて動くため、既に過去のものとなった実績値では時点が遅すぎるのです。

また、予測値にも会社予想、アナリスト予想、東洋経済予想などいくつかの種類があります。

基本的によく使われるのはアナリストのコンセンサス予想(アナリストの予想の平均値)ですが、このアナリストの予想はベースに会社予想があるため、会社予想でも代用は可能です。

PERの水準にも注意が必要です。

基本的にはPERが低い方が割安なのですが、PBRのところでも説明したように、割安な銘柄には割安になるそれなりの理由があります。

例えばPERが10倍の銘柄Aと、20倍の銘柄Bがあるとします。

今後銘柄Aは利益の縮小が予想され、銘柄Bは利益の拡大が見込まれるとします。

すると、将来的には銘柄Aの利益は減り、価格がそのままであればPERは上昇します。

一方の銘柄Bは利益の増加により、PERが低下します。

このように、PERは将来の利益成長も織り込んでプライシングがなされるため、単純に低ければ安いとは言い切れないのです。

特に、PERの場合は、PBRの純資産に比べ、利益の変動性は大きいため、分子分母両方の要因で上限に動く傾向があります。

この利益と株価という2変数を相手にする必要がある点がPERを使い際の難しい点です。

ただ、先ほども述べたように、シンプルに使うのであればPERが低い程割安という見方になります。

バリュー株効果とは

バリュー株効果とは、上記で述べたPBRやPERといった指標で見て割安な株式に投資すると、マーケット全体より高いパフォーマンスが得られる効果のことを言います。

世界的にもとても有名な効果で、株式の世界では最も有名なアノマリーと言ってしまってもいいかもしれません。

巷の多くの本でバリュー株に投資せよという記述を見ますが、その背景にはこのバリュー株投資のアノマリーの存在があります。

バリュー株効果が発生する背景

なぜバリュー株効果が発生するのか?という点に関しては、アカデミックの世界で非常に非常に多くの研究がなされ、様々な仮説が考えられています。

他のアノマリーの御多分に漏れず、バリュー株効果についてもその原因が立証されたわけではないのですが、概ね以下のような説明がなされています。

  • 一時的に売り込まれた銘柄のリバーサル
  • リスクに対するプレミアム
  • グロース株への楽観による棚ぼた

一時的に売り込まれた銘柄のリバーサル

バリュー株効果を細かく観察していくと、バリュー株には2種類の銘柄が存在することがわかります。

1つは長い間バリューの状態が続いている銘柄であり、もう一つは一時的に売り込まれてバリューの状態になった銘柄です

バリュー銘柄をこの2つに分けて分析すると、バリュー株効果の多くの部分が後者の一時的に売り込まれた銘柄から発生していることがわかります。

つまり、万年バリュー銘柄からはバリュー株効果は生まれず、一時的に売り込まれ、割安になった銘柄がバリュー株効果のドライバーとなっているのです。

これは見方を変えると、バリュー株効果というのは、株価のリバーサル効果を捉えたものと考えることができます。

リスクに対するプレミアム

バリュー株には、いわゆるボロ株が多いです。

ボロ株というのは、業績が不振で、将来的な存続も危ぶまれるような銘柄のことを言います。

このような銘柄は多くの人が避けようとします。

多くの人が避けることで、株価は大きく下がった状態となります。

つまり見方を変えると、リスクに対するプレミアムが乗った状態となっているのです。

ボロ株には高いリスクがあるので、その見返りにより大きなリターンがないと投資しませんよということですね。

このリスクに対するプレミアムがバリュー株効果のドライバーの1つと考えられています。

グロース株への楽観による棚ぼた

一般的に、バリュー株よりもグロース株の方が見栄えがいいです。

例えば、グーグルやアマゾン、フェイスブックなど、今を輝く銘柄はみんなグロース株です。

こうしたピカピカの銘柄は将来の更なる成長が予想されているため、割高な価格でプライシングされる傾向があります。

例え将来性が高かったとしても、それ以上の価格で買ってしまえば、投資パフォーマンスとしては冴えないものになってしまいます。

このように、グロース株がその期待の高さゆえに割高になり、パフォーマンスがいまいちだと、その裏側にあるバリュー株のパフォーマンスは相対的に良好になります。

つまりグロース株への過度な期待により、バリュー株のパフォーマンスが(相対的に)よくなるということです。

以上、3つほどバリュー株効果が発生する仮説をご紹介しましたが、現実にはこれ以上に非常に様々な仮説があります。

興味のある方は、米国のジャーナルなどを調べてみてください。

バリュー株投資のまとめ

以上、バリュー株投資をまとめます。

まず、バリュー株投資とは、割安な銘柄に投資するスタイルのことをいいます。

割安度を測る指標としては、PBRとPERが代表です。

両方とも値が小さい程割安という見方になります。

バリュー株投資は歴史的にパフォーマンスがよいのですが、その背景には以下の3つの要因があります。

  • 一時的に売り込まれた銘柄のリバーサル
  • リスクに対するプレミアム
  • グロース株への楽観による棚ぼた

実際にはこれら以外にも様々な仮説が提唱されています。

そのくらいバリュー株効果というのは、アカデミックな世界でも注目を集めてきた現象なのです。

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