日本人が資産運用において不利な点の1つは、株式と為替の相関が高いということです。
日本株が上がるときには円安になることが多く、下がるときには円高になることが多いのです。
もし外国の資産を保有していれば、円安時には日本株が上昇すると同時に為替の影響で外国資産の評価益も増加します。
逆に、円高時には日本株と為替の両方でやられることになります。
世界を見渡しても、これだけ株式と為替が相関をもってしまう国はなかなかないですが(しいて言えば韓国でしょうか)、これは逆に考えると、為替ヘッジが非常に有効な戦略になるということも示唆しています。
日本株と日本円の関係
よく知られていることですが、日本株と日本円には明確な関係性があります。
円が弱くなる時には日本株は上昇し、円が強くなる時には日本株は下落する傾向があります。
これは、日本は(まだ)輸出で稼ぐ製造業が多く、この製造業の利益が為替の影響を大きく受けるためです。
円安になれば円建てで見た製造業の利益は膨らみ、円高になると減少することになります。
あくまでも為替というテクニカルな要因による利益の増減なので個人的にはそこまで反応しなくてもいいのでは、と思うことも多々あります。
しかしながら、当該企業に言わせるとテクニカルだろうが何だろうが実際に利益への影響が大きいのは事実なので、為替は到底無視することはできない要因のようです。
昔は為替と株価の関係はそれほど強くなかった
日本が高度成長期以降、製造業が産業の主役であったことを考えると、昔から為替と株価の関係性が深かったように感じられるかもしれません。
しかしながら、実はそうではなく、為替と株価との相関性が特に高まったのは2000年代に入ってからです。
株価と為替の相関が高まった背景
特に2000年以降に為替と株価の相関が高まったのには、2つの背景があります。
1つはグローバルな株式の相関の高まり、もう1つは対外資産の増加です。
グローバルな株式の相関の高まり
現在では株式マーケットはグローバル化しており、国という障壁を超えて株価は連動して動くようになっています。
特に世界のメインマーケットであるアメリカの影響は絶大で、アメリカ株が上がれば他の国の株価も上がり、アメリカ株が下がれば他の国の株価も下がるという傾向が顕著に見られます。
その中でも更に日本株はアメリカ株の影響が強く、前日のアメリカ株の動きをみれば、当日に日本の株価がどうなるかと概ね予測することが可能です。
対外資産の増加
日本は世界一の対外資産保有国です。
つまり、海外に資産をもっている額が世界一の国であるということです。
個人投資家が世界株式ファンドを買ったり、世界REITファンドを買ったりすることも、対外資産の増加要因となります。
対外資産が多いと、為替と資産価格の変化が連動しやすくなります。
どういうことかというと、例えばアメリカ株をはじめとする世界の株式が下落した場合、そのリスクを嫌って対外資産を日本に戻そうとします。
そうすると、外貨売り、円買いというフローが発生します。
つまり、リスク回避の為の日本への資産還流行動が円高につながるということです。
対外資産を多く保有しているがゆえに、株式と為替の相関が高まってしまっているという皮肉な状態を生んでいるわけです。
グローバルに株式が連動して動くようになり、リスクオフの局面においては円高に振れる、この2つの要因により、日本株と世界株と為替の連動性が高まっていることになります。
日本の場合には、為替ヘッジは有効な戦略
日本のように為替と株価の相関がそこまで高くない国の場合、わざわざ為替をヘッジするモチベーションは乏しくなります。
相関が高くないのであれば分散効果が期待できますし、また短期金利の相対的な水準によってはヘッジコストを払う必要もなくなるからです。
実際のところ、海外の年金基金では為替ヘッジを積極的に行っているところはそれほど多くありません。
一方で日本のように為替による分散があまり期待できない場合には、為替ヘッジを行うことが有効な戦略となり得ます。
日本は低金利の国であり、為替ヘッジをするとヘッジコストがかかるのでこれを嫌う方は多くいます。
しかしながら、理論上は(そして現実的にも長期的には)金利差分だけ為替差益が発生するため、為替ヘッジをするしないに関してのリターンの優劣は存在しません。
リターンの優劣が存在しないのであれば、分散効果の効かないリスクは排除するほうが理にかなっています。
個人投資家ではあまり為替ヘッジを活用している方を見かけませんか、日本の株式と為替の相関の高さという特殊性を勘案すると、もっと活用してもよいのではないかと思うことが多々あります。