米国株の上場銘柄数が減少しています。
20年ほど前(1997年頃)は上場銘柄は8000社近くありましたが、2017年時点では4000社を割る水準にまで低下しています。
なぜ米国で上場株式数が減少しているのでしょうか?
理由は以下の3点が挙げられます。
- M&Aによる上場企業の減少
- 上場しなくても資金調達が可能な環境になった
- 上場のハードルが上がった
以下、それぞれ説明していきます。
M&Aによる上場企業の減少
米国では企業同士のM&Aが活発です。
そもそも企業の経営戦略の重要課題の1つにM&Aが位置付けられるほど、米国ではM&Aは重要視されています。
近年のグーグルやAmazonを見ればわかりますが、米国の企業は新しい分野に進出したり、新しい技術を獲得しようとした時には、自社で育てるのではなく、他社を買収するという手段をとることが多いのです。
日本ではM&Aで買われる側というのは何となくイメージが悪い印象がありますが、米国では買収されるということは、それだけの価値がある会社とみなされることになります。
ですので買収されることに日本ほど後ろ向きではありません(もちろん中には後ろ向きの企業もあります)
特に近年ではよりM&Aが活発になったことが、上場企業が減少した要因の1つとなります。
上場しなくても資金調達が可能な環境になった
企業が上場する大きな目的は資金調達です。
上場時に売り出した株式で資金を調達し、会社の成長に投資することが上場する最たる理由です。
しかしながら、近年では必ずしも上場しなくても資金調達できる環境が整ってきました。
その最たるものがベンチャーキャピタルやプライベートエクイティの活性化です。
ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティによる資金調達
日本とは異なり、米国ではベンチャーキャピタルやプライベートエクイティがとても盛んです。
多くのベンチャーキャピタルが若く有望(そう)な企業に投資しており、多くのプライベートエクイティファンドが未上場企業に投資したり、実際に経営権を握ったりしています。
これらの資金フローが潤沢にあるため、有望なベンチャーであれば上場することなくある程度の資金を調達することが可能なのです。
成長のための資金が調達できるのであれば、わざわざめんどくさい上場などする必要はなく、未上場のままでいる企業も多いのです。
世界中にユニコーンと呼ばれる推定時価総額1000億円以上の企業が存在しますが、その多くは米国に拠点を持っています。
上場のハードルが上がった
昔に比べると、米国での上場はハードルが高くなりました。
きっかけはITバブルの崩壊です。
ITバブルの時はほとんど売り上げもなく赤字を垂れ流すような企業が上場しましたが、ITバブルがはじけると共にこれらの企業はほとんど無価値になり、多くの投資家が損害を被りました。
こうした経験を踏まえ、それ以降の上場基準は以前に比べると厳しくなりました。
ただ、それまでが緩すぎたのか、それともその後が厳しすぎるのかは議論が分かれるところです。
ちなみに日本の場合、上場基準は米国よりも緩く、そのため上場株式数は現在では米国と概ね同じくらいになっています(約3600社)
感覚的には規制面では米国より日本の方が厳しそうですが、上場基準という点に関してはそうではないということです。
上場企業だけを見ていると米国株を見誤る
以上が米国の上場株式数が減少してきた理由です。
考えてみれば、資金調達ができるのであれば、わざわざ株主や世間からガミガミ文句を言われ、レポーティングもしっかりしないといけない上場企業になるより、未上場でいるほうがメリットが大きいのです。
そしてこのようなメリットを享受している未上場企業が米国にはたくさんあります。
一般的に株式インデックスで計測されるリターンは、上場企業を対象としていますが、これほど多くの有望な未上場企業のある現在ではそれだけを見ていると米国株を見誤ることになります。
もちろん一般の個人投資家が未上場株式に投資することは容易ではありませんが、ある程度の資金を持っている場合には私募のプライベートエクイティファンドなどに投資できる場合もあります。
そしてプライベートエクイティファンドは、長期的に見るとすこぶる良好なパフォーマンスを投資家に提供しています。
このことはつまり、未上場企業を含めると米国株全体のパフォーマンスは一般的なインデックスよりもよい可能性があるということです。
もちろんプライベートエクイティファンドの手腕によるものなのか、そもそも未上場企業のパフォーマンスが平均的に優れているのかは議論がありますが、少なくとも米国には上場企業以外にも膨大な企業が存在していることは認識しておいたほうがよいのではないかと思います。