この調整を受け、米国大手金融機関のJPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOが自己資金による自社株買いを発表しました。
また、国内大手証券会社の野村ホールディングスも自社株買いを検討との報道が流れました(両者ともブルムバーグより)
このようなマネジメントによる自社株買いは、マーケットに対してポジティブなシグナルと受け止めることができます。
自社のことを誰よりも熟知しているマネジメントが自社株買いを発表することは、その株が割安であり、かつ自社株を買う体力もあることを如実に表しているからです。
自社株買いを実施する意味
自社株買いをする意味は大きく分けると2つありますが、2つとも突き詰めると株価対策という側面をもつことになります。
1つは株価が割安であるというシグナル、もう一つは株主還元というシグナルです。
自社の株価が割安であるというシグナル
企業が自社株買いを行う場合、自社の株価が安いというアナウンスをする意味合いがあります。
安いからこそ、自ら株式を購入することにより、マーケットに自社の株価が安いことを身をもってアピールすることになります。
その企業のことを最もよく知る経営者自身がそのように判断しているということなので、マーケットに対してはポジティブな影響を与えることが多いわけです。
株主還元
自社株を購入し、その株式を消却した場合、発行済み株式数が減ります。
そのため、1株当たりの利益は増え、理論上株価は上昇します。
このように、自社株を購入することで株主に利益をより多く還元し、株価を上げるという意図で自社株買いが行われることがあります。
自社株買いがなぜ好シグナルなのか
自社株買いを行うのは、自社の株価が本来の価値に比べて安いということ、また、自社株買いを行う体力があるということを示しています。
この両方を満たすことに自社株買いは意味があります。
例えば、過去を振り返ると、リーマンショックの頃は明らかに株価は安値圏でしたが、そもそも自社株買いを行うための資金がなく、どんどん膨れ上がる損失に自己資本が食いつぶされていくという状況でした。
つまり、自社株買いなんてできる状況じゃないよというのがリーマンショックの頃の状況でした。
翻って、2011年のヨーロッパ債務危機の頃は、米国のいくつかの銀行は自社株買いを行いました。
この自社株買いは明らかに株価が安いというシグナルであり、実際にその頃に購入しておけばその後のパフォーマンスは好調でした。
このように、企業に自社株を購入する余力があり、実際に経営者が株価が安いと考えているところに、自社株買いがマーケットに対する好シグナルとなる理由があります。
逆に、企業が自己資本を確保するために、出資先を探して回るというのはとても危険なシグナルです。
もちろんそれはその企業が資金繰りに窮しているサインに他ならないからです。
つまり、増資はネガティブなサインであり、自社株買い(減資)はポジティブなサインと素直に受け取ることができます。
今後のマーケットがどうなるかは定かではありませんが、少なくとも自社株買いを発表している経営者の視点から見ると、株式への投資は悪くないタイミングであるというシグナルが出ていることになります。