各資産の期待リターンをコストやリスクで調整し、比較を行います。
資産によってリスクが異なるため、そのままの状態では期待リターンの比較を行うことはできませんが、リスクで調整することで横比較が可能になります。
今回はシャープレシオという指標を用いて資産間の調整を行い、横比較をします。
シャープレシオとは
シャープレシオとは、リスク調整後のリターンを表す指標です。
具体的には以下の式にて算出します。
シャープレシオ=(期待リターンー短期金利)÷リスク
単純なリターン/リスクではなく、分子で短期金利を差し引いている点に注意してください。
短期金利は一般的にリスクがないと考えられるため、このリスクがない資産に対する超過リターンをその資産のリスクで割ったものがシャープレシオとなります。
昨今の超低金利の時代においてはこの短期金利を無視してリターン/リスクでもほぼ差し支えないのですが、今の時代がある意味異常なので、ここではちゃんと短期金利を引いたシャープレシオを使っていきます。
シャープレシオの計算例
国内株式のリターンが8%、リスクが20%、短期金利が2%とします。
このときのシャープレシオは
シャープレシオ=(8%ー2%)/20%=0.3
となります。
コスト控除後の期待リターン
まず、各資産の期待リターンですが、こちらは過去の記事で算出済みです。
詳しい算出方法を知りたい方は以下の記事をご参照ください。
上記の記事で算出してきた期待リターンは運用にかかるコストは考慮してきませんでした。
ここではコストを控除した後の期待リターンを算出します。
具体的には、国内資産は0.3%、外国資産は0.5%、新興国資産は1%、それぞれ期待リターンから差し引きます。
結果は以下の通りです。
期待リターン | コスト控除後 | |
短期金利(国内) | 1.0% | – |
国内債券 | 1.5% | 1.2% |
国内株式 | 5.0% | 4.7% |
外国債券 | 2.5% | 2.0% |
外国株式 | 6.0% | 5.5% |
J-REIT | 5.0% | 4.7% |
外国REIT | 6.0% | 5.5% |
新興国債券 | 5.0% | 4.0% |
新興国株式 | 8.5% | 7.5% |
各資産のリスク
更に表にリスクを加えたのが以下になります。
期待リターン | コスト控除後 | リスク | |
短期金利(国内) | 1.0% | – | – |
国内債券 | 1.5% | 1.2% | 4.7% |
国内株式 | 5.0% | 4.7% | 25.1% |
外国債券 | 2.5% | 2.0% | 12.6% |
外国株式 | 6.0% | 5.5% | 27.3% |
J-REIT | 5.0% | 4.7% | 22.0% |
外国REIT | 6.0% | 5.5% | 23.0% |
新興国債券 | 5.0% | 4.0% | 15.0% |
新興国株式 | 8.5% | 7.5% | 24.0% |
リスクはGPIFが公表している資産についてはそのままのデータを使用、ない資産は過去5年のデータから計測しています。
シャープレシオのまとめ
ここまででシャープレシオ計測に必要なコスト控除後リターン、短期金利、リスクが出揃いましたので各資産のシャープレシオを計測します。
結果は以下の表になります。
期待リターン | コスト控除後 | リスク | シャープレシオ | |
短期金利(国内) | 1.0% | – | – | |
国内債券 | 1.5% | 1.2% | 4.7% | 0.04 |
国内株式 | 5.0% | 4.7% | 25.1% | 0.15 |
外国債券 | 2.5% | 2.0% | 12.6% | 0.08 |
外国株式 | 6.0% | 5.5% | 27.3% | 0.16 |
J-REIT | 5.0% | 4.7% | 22.0% | 0.17 |
外国REIT | 6.0% | 5.5% | 23.0% | 0.20 |
新興国債券 | 5.0% | 4.0% | 15.0% | 0.20 |
新興国株式 | 8.5% | 7.5% | 24.0% | 0.27 |
これでようやく資産間の比較が行えます。
シャープレシオの比較
まず、債券のシャープレシオが他の資産に比べて劣っています。
これは現状の超低金利を反映した影響が色濃く出ています。
やはり、利回りの低い環境においては、債券の運用効率(シャープレシオ)は低くならざるを得ません。
株式、REITに関しては、国内、海外でほぼ差はありません。きれいに0.15~0.2に収まっています。
新興国資産については他の資産よりやや高めのシャープレシオになっています。
これは期待リターンが高いというよりも、リスクがそれほど高くないことが影響しています。
外国債券12.6% ⇔ 新興国債券15%
外国株式27.4% ⇔ 新興国株式24%
債券はまだしも、株式で新興国より先進国の方がリスクが高いのは違和感がありますね。
この点は修正の余地ありです(どちらかというと、外国株式のリスクが高すぎのような気がします)