私はリートは有望な投資対象の1つと考えていますが、こと新興国リートに関しては懐疑的です。
もちろん新興国特有のリターンを提供してくれる、先進国とは違った相関構造をもっているという点はメリットではあるのですが、いかんせん投資できるファンドがいびつさが大きすぎます。
加えて、運用コストという点からも魅力的には思えません。
ここではなぜ新興国リートへの投資は必要ないのかをご紹介します。
実質コストが高い
信託報酬
まず、新興国リートインデックスファンドの信託報酬を確認しています。
代表的なところは、
- eMAXIS 新興国リートインデックス
- SMT 新興国REITインデックス・オープン
となりますが、両方とも信託報酬は年率0.6%(税抜き)です。
率直に言って新興国の資産でかつリートという主流ではない投資先であることを考えると、悪くはない水準と言えます。
実質コストは高い
ただし、実際には信託報酬に加え、運用でかかってくるコストも上乗せして考える必要があります。
データを人様のサイトから拝借して恐縮ですが、 インデックス投資日記@川崎さんの記事によると、新興国リートのインデックスファンドの実質コストは1%以上です。
まあ新興国というなかなか投資のしにくい国へのアクセスを考えると多少の高コストには目をつぶる必要がありますが、それでも昨今の低コストインデックスファンド競争の中、1%を超えるコストはいただけません。
期待リターンの2割くらいのコストがかかる
例えば新興国リートインデックスの配当利回りを5%とすると(昨今では大体このくらいの水準です)、コストだけで利回りの2割を持っていかれることになります。
トータルの資産に対し1%と言われると、そんなに大きな数字には思えませんが、大切なのは期待されるリターンに対しどのくらいのコストがかかるかということです。
もちろん新興国リートの期待リターンが5%程度というのは議論のあるところですが(細かいことは省きますが、キャッシュフローの方がより正確な期待リターンの代理変数になります)、それでもそれほどおかしな数字でもないかと思います。
このように、実際にかかるコストという面から見て、新興国リートは魅力的には思えません。
ポートフォリオの大きな偏り
実質南アフリカ&メキシコファンド
新興国リートインデックスの構成国上位5つは以下のようになっています(eMaxisの新興国REITインデックスファンドの2017年10月末時点の国別配分)
- 南アフリカ48%
- メキシコ26%
- タイ9%
- マレーシア7%
- トルコ5%
南アフリカで50%弱、更にメキシコを合わせて75%程度となっています。
ほとんど南アフリカ&メキシコファンドと化しています。
また、保有銘柄数も42銘柄とあまり多くありません。
つまり、特定の国、銘柄への集中度合いが高く、分散効果が効きにくいというのが現状の新興国リートインデックスの実態です。
インデックスファンドのメリットの1つは多くの国や地域、セクター、銘柄などに分散することで全体的なリスクを下げることですが、こと新興国リートにはこのようなメリットが希薄です。
しかも、これらの集中した投資先の為替リスクももれなくついてくるため、ポートフォリオ全体の動きがほとんど南アフリカとメキシコのリート市場と為替によって動かされることになります。
もちろん南アフリカやメキシコに強い思い入れがあり、このようなポジションに魅力を感じる人は投資をすることはやぶさかではありません。
ただ一般的な人に対し、お勧めできる構成になってはいないということです。
まあ新興国リートはまだまだ発展途上で、まだリート市場自体も存在しない国も多々あるため、偏ってしまうのは致し方ないことかもしれません。
REITは有望な投資先の1つ
私自身は新興国リート自体は有望な投資先と考えています。
そもそもリートというのはフィービジネスのため、ビジネスモデル的に旨味があります。
つまり、キャッシュフローが安定しやすいということです。
また新興国では今後も人口の増加が見込まれるため、そうなるとオフィスや住宅を含めた不動産に対する需要も増えることが予想されるため、リートの魅力度も増すことが予想されます。
ただいかんせんまだリート市場ができたばかりであり、国によって取り組み方もだいぶ違い、それがいびつなポートフォリオに結びついてしまっているというのが実態です。
今後多くの国でリートの制度が整備され、多くの企業が参入し、リート市場が活性化された段階においては、私自身もぜひこの市場に参戦したいと考えています。
個別の不動産投資よりは魅力的
不動産1練買いのリスクは高い
最近よくアジアの不動産に投資しませんかという広告やお誘いを見かけます。
確かに既に述べたように、アジアの不動産には魅力的な点があります。
一方で、個人的には特定の不動産のみを購入したり、運用したりするのはおすすめできません。
不動産というのはただでさえ個別性が強く、見極めるのが難しい世界です。
ましてや海外の、新興国の不動産ともなるとなおさらです。
新興国の場合には様々な規制もあるため、いざ投資をする時には多くの手数料を抜かれることも想像されます。
つまり、新興国の個別の不動産に投資をすることは、リスクが高いということです。
新興国リートインデックスの方がリスクは分散されている
これに比べると、新興国リートインデックスの方が相対的にはましなのではないかと思います。
もちろん南アフリカとメキシコに偏っているという難点はありますが、それでも例えばカンボジアのコンドミニアムを1練購入するよりはリスクは分散されています。
上記で新興国リートインデックスファンドは42銘柄保有していると述べましたが、これは42個の物件を保有しているという意味ではありません。
保有しているのはリートの運用会社です。
そして、それぞれの運用会社は、複数の物件を分散して保有しています。
つまり、実質的な投資物件数という意味では、42個よりはるかに多いということです。
このことを踏まえると、もちろんTOPIXなどの広く分散されたインデックスに比べると分散効果は劣りますが、個別の不動産に投資するよりははるかに分散されているのです。
ですので、新興国の不動産へ個別に投資するよりは、新興国リートインデックスファンドへ投資した方がよいというのが私の考えです。