J-REIT、外国REITの期待リターンの算出。実は株式と同程度の高い水準

収益率株式や債券と同様に、REITについても期待リターンの算出は可能です。

ただ、REITの場合には、株式と債券と両方の性質を合わせ持っており、単純に株式のようにリスクプレミアムからの算出が難しいのが難点です。

ここでは、J-REITと外国REITについて、サプライサイドアプローチという方法で期待リターンの算出を行います。

なお、株式の期待リターンについては以下の記事をご参照ください。

日本株、外国株の期待リターンをリスクプレミアムから算出する方法
株式の期待リターンの算出方法はいくつかあります。 ここではいわゆるデマンドサイドアプローチと呼ばれる、リスクプレミアムを用いて株式の期...

J-REITの期待リターン算出

期待リターンの算出式

期待リターン=配当利回り+内部成長率

という式から求めます。

これはサプライサイドアプローチと呼ばれる算出方法で、リターンをサプライする(供給する)側から見た期待リターンの算出方法になります。

つまり、REITサイドから見た期待リターンということです。

これとの対比としてデマンドサイドアプローチという、投資家がデマンドする(要求する)リターンを求める方法もありますが、ここでは前者を使ってます。

J-REITの期待リターン

配当利回りは相場により変動しますが、過去の平均的な水準はレコードでは4%程度です。

この数字を期待配当利回りとして使用します。

内部成長とはREIT自身の成長のことを指します。

例えば、現在の所有している物件の家賃が上がったり、空室率が下がったり、新規物件を購入して収益性が上がったりといった要因がこの項目にあたります。

この内部成長は経済成長と密接にリンクしているため、ざっくりと日本の経済成長率の1%を用います。

ゆえに、

J-REITの期待リターン=配当利回り4%+内部成長率1%=5%

とします。

外国REITの期待リターン算出

期待リターンの算出式

J-REITと同じ、

期待リターン=配当利回り+内部成長率

が基本式ですが、外国資産の場合ここに為替の要因も加わってくるため、これを加えて

期待リターン=配当利回り+内部成長率+為替調整項

とします。

外国REITの期待リターン

配当利回りは過去と現在でかなり違いがあるので悩ましいところですが、2017年現在の水準4%程度は歴史的に見てあまりにも低すぎます。

今後金融緩和状態が正常化するに従い、配当利回りの上昇が予想されることを加味し、5%程度とします。

内部成長率はJ-REITと同様に経済成長率を代理変数として使い、外国の場合日本より成長率が高く2%とします。

為替の調整項に関しては株式や債券と同じ考え方で、短期金利の差分を調整します。

為替調整項=日本の短期金利1%ー外国の短期金利2%=-1%

ゆえに、

期待リターン=配当利回り5%+内部成長率2%ー為替調整-1%=6%

とします。

これまでの期待リターンまとめ

  期待リターン
短期金利(国内) 1.0%
国内債券 1.5%
国内株式 5.0%
短期金利(外国) 2.0%
外国債券 2.5%
外国株式 6.0%
J-REIT 5.0%
外国REIT 6.0%

前回の表にREITを加えました。

J-REIT、外国REIT共に株式と同じ期待リターンとなっています(個人的にはそれほど違和感はありません)

実際、過去のリターンの推移を見ても、REITは株式と同様か、期間の取り方によってはそれ以上になります。

リートのリターンを考える際には、やはりその高い配当利回りがポイントになります。

配当を再投資し続けることで、複利効果が生まれ、リターンが加速していきます。

また、REITは株式と違いサブの資産という位置づけにされることが多いですが、そのために相対的に見過ごされている資産でもあります。

分散効果という意味でもREITには効果がありますので、投資の際にはぜひ検討してもよい資産ではないかと思います。

期待リターンの意味について

これまで算出してきている期待リターンは、今後20年や30年といった超長期的に各資産がどの程度の年率リターンを生み出しうるかを概算したものです(GPIF(日本最大の公的年金)は25年程度の運用期間を想定して算出しています)

ですので、今年の各資産のリターンはどうなるか、などという短い期間について予測しているわけではないことにご注意ください。

今後1年のリターンなどはまず当たりません。ストラテジストやエコノミストは商売の都合上今年の目標株価などを公表しますが、参考程度に留めておく方が無難です。

また、数字そのものを追うのではなく、その背後にある考え方を理解する方が得るものは大きいです。

より長い期間で見ると、その資産の持つ本質的な価値へと年率リターンが収束していく傾向があるため、より推定しやすくなります。

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