前回の「株式・債券・REITの期待リターン、シャープレシオまとめ」の続きです。
今回は、まず前回違和感のあったリスクの微調整を行いシャープレシオの再計算を行います。
その後でGPIFの算出した期待リターン、リスクに基づく各資産のシャープレシオを計測し、GPIFは各資産の優劣をどう見ているかを見てみます。
初めて読む方は前回の記事からどうぞ
期待リターン、シャープレシオまとめ(リスク修正版)
前回新興国株式と外国株式でリスクの逆転現象が起きていたので、すべてのリスクを過去5年のデータに統一し、シャープレシオを計測しました。
結果は以下の通りです。
コスト控除後 期待リターン |
リスク (前回) |
リスク (今回) |
シャープレシオ (前回) |
シャープレシオ (今回) |
|
短期金利(国内) | – | – | – | – | |
国内債券 | 1.2% | 4.7% | 2.5% | 0.04 | 0.08 |
国内株式 | 4.7% | 25.1% | 25.0% | 0.15 | 0.15 |
外国債券 | 2.0% | 12.6% | 11.0% | 0.08 | 0.09 |
外国株式 | 5.5% | 27.3% | 24.0% | 0.16 | 0.19 |
J-REIT | 4.7% | 22.0% | 22.0% | 0.17 | 0.17 |
外国REIT | 5.5% | 23.0% | 23.0% | 0.20 | 0.20 |
新興国債券 | 4.0% | 15.0% | 15.0% | 0.20 | 0.20 |
新興国株式 | 7.5% | 24.0% | 24.0% | 0.27 | 0.27 |
前回とリスクを比較すると、国内債券、外国株式がやや低くなります。
ただこちらでも、外国株式のリスクは新興国株式のリスクより低くなりません(外国株式が上回っていた前回よりはましですが)
シャープレシオの水準にはそれほど影響なく、債券が低く、新興国資産がやや高いという前回と同じ結果です。
GPIFのデータを使ったシャープレシオ計測
次にGPIFの算出した期待リターン、リスクを用いて各資産のシャープレシオを計測し、GPIFは各資産の優劣をどう見ているかを確認します。
結果は以下になります。
期待リターン | コスト控除後 期待リターン |
リスク | シャープレシオ | |
短期資産 | 1.0% | – | – | – |
国内債券 | 2.0% | 1.7% | 4.7% | 0.15 |
国内株式 | 5.2% | 4.9% | 25.1% | 0.16 |
外国債券 | 3.5% | 3.0% | 12.6% | 0.16 |
外国株式 | 6.2% | 5.7% | 27.3% | 0.17 |
(※注1)期待リターンは市場基準ケースを使用
(※注2)コストは国内資産は0.3%、外国資産は0.5%を引いています
どの資産もほぼ同じシャープレシオになっています。
各資産で優劣のない中立的な推定をしているといえますが、一方で金太郎飴のようで面白みに欠ける結果とも言えます。
まあ理論上は各資産のシャープレシオは等しくなる必要があるため、理論に忠実に推計しているという見方もできるかと思います。