新興国債券(ドル建て、為替ヘッジ)が売られる時と買われる時

株式パフォーマンス

新興国債券(ドル建て、為替ヘッジ)への投資とマーケット環境についての話です。

あらゆる資産には割安、割高という状態が存在します。

もちろん新興国債券(ドル建て、為替ヘッジ)にも割安、割高という概念はあるのですが、他の資産遺比べ、その差が大きくなく、時期を選ばずに投資しやすい金融商品といえます。

というのは、為替がヘッジされており、債券部分の変動要因のみにリスクが限定されているからです。

ただし、もちろん割安な局面というのが存在しないわけでなく、投資環境によって割高・割安な時期は存在します。

ここでは新興国債券(ドル建て、為替ヘッジ)へ投資する際の環境の見極めについてご紹介します。

なお、以下では、新興国債券との記載は、新興国債券(ドル建て、為替ヘッジ)を意味することをご了承ください(記述が長いので省きます)

新興国債券が魅力的なタイミング

新興国債券は以下のような環境において、魅力度が高まります。

  1. 新興国全般への不安が広がり、債券が売られ、金利が上昇したとき
  2. 新興国債券がマーケットからの関心を失い、高い利回りで放置されているとき
  3. ヘッジコストが安いとき(言い換えると日本と米国の短期金利の差が小さいとき)

新興国不安による金利上昇

1はわかりやすくて、金利が上昇すると、魅力度(期待リターン)は高まるので、タイミングとしては適切です。

このような時には買い向かえる人が少ないので、その分リスクプレミアムが上乗せされ、事後的なリターンが高まる傾向にあります。

ネグレクト効果

2はいわゆるネグレクト効果で、放置されている市場というのは往々にして割安になっているため、そのようなタイミングで購入しておくと、事後的なリターンが高まります。

ヘッジコストが小さい

3はテクニカルな話ですが、ドル建て資産をヘッジする際にはヘッジコストがかかります。

このヘッジコストは日本と米国の短期金利の差となるため、この差が小さいほど(もしくは日本の金利が米国より高いほど)実質的な利回りが高まります。

バーナンキショック後は魅力的であった

バーナンキショックで新興国債券の利回り上昇

ここで過去の例を1つ紹介します。

2013年半ばのバーナンキショック(量的緩和の終了を示唆)時には、量的緩和のテーパーリングが示唆され新興国株式、債券ともに大きく売り込まれました。

そして、債券の利回りが大きく上昇しました。

この時はバーナンキ議長の発言にマーケットが過剰に反応したため、新興国の債券は過度に売り込まれました。

結果ととして、利回りは非常に魅力的な水準にまで上昇しました。

つまり、冷静に考えれば、非常に割安感があったのです。

また、日米金利差が小さかったため、ヘッジコストという点でも魅力的でした。

期待リターンは非常に高い

この時の新興国債券の期待リターンを大まかに算出してみます。

まず、利回りは7%程度まで上昇しました。

つまり、ベースとなる期待リターンは7%です。

日米ともゼロ金利政策を行っていましたので、ヘッジコストはほどんとなしです。

まあここでは少し保守的に0.5%とします。

すると、期待リターンは

7%-0.5%=6.5%

となります。

なんと、為替リスクなしで、かつ株式のような大きなリスクをとることなく6%以上のリターンを期待できたのです。

このように、投資環境によっては、新興国債券は非常に魅力的なリターンを提供してくれるのです。

今後の見通し

現在2017年時点においては、大きな危機もなく、マーケットは平穏な状態が続いています。

新興国債券の利回りも5%程度と米国が利上げをしているわりには比較的低い水準にとどまっています。

また、ヘッジコストという観点からすると、現在時点で2%程度かかっており、今後の米国の更なる利上げを想定すると、高い水準と言わざるを得ません。

つまり、現在は新興国債券への投資はあまり魅力的ではない環境です。

試しに期待リターンを出してみると、

5%-2%=3%

となり、J-REITより低い水準です。

もちろんJ-REITよりリスクも低いので一概に比較はできないのですが、魅力的ではないことは確かです。

新興国債券へ投資するのであれば、次のショックのようなものを待ってもよいのではないかと思います。