為替ヘッジありの外国債券への投資は、ヘッジコストとイールドカーブの傾きが重要

グローバルな投資

日本では長年低金利(もしくはゼロ金利)の状態が続いています。

一方で、外国の債券には魅力的な利回りのものが多く存在します。

外国の債券と言っても種類は様々ですので、ここでは日本を除く先進国の国債を外国の債券と定義します。

理論上は外国債券に為替ヘッジで投資しても、日本債券と比べてリターンリスクという観点からはメリットは得られません。

しかしながら、現実には外国債券に投資する際にはいくつかのポイントが存在し、それらを考慮することで、有利に投資を進めることも可能です。

ここでは、外国債券(特に外国債券ファンド)に投資する際の3つのポイントをご紹介します。

ヘッジコスト

短期金利の差=ヘッジコスト

外国債券を為替ヘッジありで購入すると、その名の通り為替部分がヘッジされますので、為替リスクは排除され純粋に外国の債券のみへ投資したことになります

ただし、ここで注意が必要なのは、ヘッジコストの存在です。

例えば米国債券へ投資し、その為替部分をヘッジするためには米ドル売り、円買いの為替取引が必要になります(米国債券へ投資するためにすでに米ドルは買っていることになるため、同額の米ドルを売る必要があるためです)

ここで、例えば米国の短期金利が3%、日本の短期金利が1%だとすると、米ドル売り、円買いをすると、-3%+1%=-2%がヘッジコストとしてリターンから引かれることになります。

つまり、短期金利の比較を行い、高金利の国に投資しその為替をヘッジすると金利差分のコストが発生するということです。

逆に自国の短期金利の方が高ければヘッジプレミアムといってプラスの利回りが得られます
(念のため補足すると、為替ヘッジありのファンドを購入すると、上記で述べた為替の反対売買がファンドの中で行われています。ですので自分で反対売買をする必要はありません)

このヘッジコストという言葉はミスリードされやすく、為替をヘッジするために必要なコストとして認識されていることがあります。

しかし、上記で述べたように、短期金利の差を調整するのがヘッジコストの本質です。

ですので、コストというよりは、調整リターンと捉えた方が理解はすっきりします。

スワップスプレッド

為替ヘッジにかかるこすとは上記の通りですが、実は為替をヘッジする際にはもう少し込み入ったコストがかかる場合があります。

スワップスプレッドとよばれるものですが、これは為替の需給によってかかってくるコストになります。

簡単な例で言うと、円に対してドルの需要が強い場合、為替をスワップする(要はヘッジする)際に、上乗せのコストを要求されることがあります。

上記の例では、本当は2%のコストでいいものが、ドルの需要が強いのであと0.5%上乗せしないとドルは売らないよ、という状況が発生するのです。

中央銀行の政策の違いがスワップスプレッドを生む

スワップスプレッドの発生要因は、通貨間の需給の違いです。

ではこの需給の違いは何に起因するかというと、近年では中央銀行による政策の差が需給に大きなゆがみをもたらしています

例えば、アメリカは利上げ局面に入る一方、日本はまだまだマイナス金利かつ量的緩和を続けています。

このような状況では、金利が高い方のドルに需要が集まります。かつ通貨の量も相対的にドルの方が引き締めに入っているので、供給もドルの方が少なくなります。

このような需給の差がスワップスプレッドとして、為替のヘッジコストに跳ね返ってきます。

リーマンショックの時もスワップスプレッドは拡大した

もう一つのわかりやすい例では、リーマンショックの時にドル円のスワップスプレッドは拡大しました。

この時はドル円のみならず、ドルユーロなど多くの通貨でスプレッドは拡大しました。

背景にあったのは、基軸通貨としてのドルの信頼性です。

リーマンショックのような大きな危機が市場を襲うと、みんなできるだけ安全通貨に逃げようとします。

そして、基軸通貨として使われ、世界で最も流通しているドルに需要が集中したのです。

そのため、この時に為替をドルに対しヘッジするためには、長短金利差に加え、それ相応のスワップスプレッドも必要となりました。

イールドカーブの傾き

外国債券に為替ヘッジで投資する際に2つ目に重要なポイントは、イールドカーブの傾きです。

結論から言うと、他国のイールドカーブが立っている(短期金利より長期金利の方がより高い)方が、投資妙味が増します。

具体例で説明します。

先ほどと同じで、日本の短期金利1%、米国の短期金利2%とします。

そして、日本の長期金利を3%、米国の長期金利を6%とします。

この場合、日本の債券に投資すると、利回りはそのまま3%です。

一方で、米国の長期金利に為替ヘッジ付きで投資すると、

米国の長期金利ーヘッジコスト=6%-(2%-1%)=5%

となります。

つまり、為替リスクを消してなお5%の利回りが得られることになります。

イールドカーブが急だとヘッジ後のリターンが高まる

なぜこのようになるかというと、米国の方がイールドカーブが急だから(短期より長期の方がより利回りが高い)からです。

ヘッジコストというのは、あくまで短期金利差により算出されます。

ですので、長期金利が短期金利より高ければ高いほど、ヘッジ後に残る利回りも大きくなります

ただし、長期金利が高いということは、例えばインフレリスクが高かったり、もしくはその国の債券の信用性が下がっていたりという要因も時にはありますので、この辺りは精査する必要があります。

ただ、一般論としては、債券のイールドカーブがスティープな(長期金利がより高い)国に、為替ヘッジ付きで投資するというのは、リスクを抑えながらより高いリターンを狙う場合の常套手段です。

是非為替ヘッジ付きで投資する際には、注目すべきポイントになります。

まとめ

以上、外国債券に為替ヘッジ付きで投資する際のポイントをまとめると以下のようになります。

  • ヘッジコストの高さ
  • イールドカーブの形状

既に述べたように、ヘッジコストは短期金利の差で決まりますので、短期金利の高い国に投資するほど、コストがかかります。

また、通貨の需給によってスワップスプレッドというコストが更にかかってくることがあります。

なおスワップスプレッドの水準ですが、平常時であれば無視できるほど小さいですが(例えば0.1%など)、昨今のドルに対する需要が大きい時だと、1%以上かかることもあります。

ここは投資家としてはコントロールできないところなので、行く末を見守るしかありません。

2つ目のイールドカーブの形状については、是非投資の際には参考にされるといいと思います。

細かい分析は必要なくて、短期金利と長期金利の差がどのくらいかを見ておけばそれで充分です。

以上、為替ヘッジ付きで外国債券に投資する際のポイントになります。