金利上昇が怖ければ銀行株を買えばよい。配当利回りが高いのも魅力

パフォーマンス日本を含め、世界中で低金利の状態が続いています。

米国こそそれなりの金利水準へと上がってきていますが、それでも歴史的には十分低金利の状態と言えます。

そしてこの低金利の世界の中、よく聞かれるのが

「金利の上昇が怖い」

ということです。

金利上昇の何が怖いかというと、債券を保有している場合にはダイレクトに債券価格が低下しますし株式を持っていても金利上昇が株価の下落につながることがあります。

しかしながら金利の上昇に対処する方法は非常に多く存在します。

債券を保有していてもデュレーションを短くすれば金利変化に対する感応度を下げられます。

個人投資家であれば、個人向け国債(変動型)を購入するのも1つの手です。

ここで紹介するのは、そのようないわゆる王道ではなく、株式を使って金利上昇に備えるという方法です。

一口に株式といっても実に様々な種類が存在しますので、作り方によって金利上昇に強いポートフォリオができます。

金利上昇に備えるには銀行株

最初に結論から申し上げると、株式で金利上昇局面を乗り切るには銀行株を買えばよいです。

銀行株と聞くと、

  • 景気敏感株
  • 古いビジネスモデル
  • 規制でがんじがらめ
  • AIで大量失業
  • リーマンショックの元凶

など、ネガティブなイメージが多く湧いてきます。

しかしながら、金利上昇局面においては、銀行は大いに活躍してくれることが期待できる業種なのです。

ただ、単一の銀行株では個別リスクが伴いますので、複数の銀行株への分散か、もしくは銀行株ETFを保有することをおすすめします。

銀行株が金利上昇に強い理由

なぜ銀行株は金利上昇に強いのか?

その理由を理解するには、銀行のビジネスモデルを理解する必要があります。

銀行の本業は融資による利息の受け取り

銀行のコアな業務(本業)は貸出業務です。

お金が必要な企業にお金を貸出し(融資し)、その融資したお金の利息で儲けるのが銀行業の本質です。

一方、お金を貸し出す原資は何かというと、国民の皆様の預金です。

預金を元手にして、お金を貸出し、利息を得るというのが銀行の本業になります。

ビジネスモデルとしてはこのように実にシンプルになっています。

昨今では融資以外にも企業を買収したり、投資したり、ファンドを売ったりして収益を稼いでいる面もありますが、本業は今も昔も融資による収益です

短期で借り、長期で貸す

預金を使って企業に貸し出すのが銀行の(本来の)ビジネスモデルですが、ここで重要なのが、時間軸の違いです。

預金というのは短期資金に相当します(いつでも引き出せるため)

一方企業への融資は長期の貸し出しになります(3日貸すとかは通常ありえません)

そして、短期の資金と、長期の資金では利息(利回り)が異なります。

もちろん長期の方が流動性が劣るため、利回りは高くなります。

つまり、利回りの低い短期資金でお金を調達し、利回りの高い長期資金でお金を貸し出し、その利回りの違いにより儲けるというのが銀行の融資の基本です。

もちろん企業への融資にはクレジットリスクも乗っかるため、実際にはここも考慮する必要があるのですが、単純化するとこういうことになります。

長期金利が上がると収益が増える

短期で調達し、長期で貸すというビジネスモデルから、なぜ金利が上がると収益が増えるのかがわかります。

長期金利が上昇すれば、短期金利と長期金利の差が開きます。

つまり、それだけ多くの収益が生まれることになるのです。

マイナス金利が銀行に不利な理由

日銀のマイナス金利政策により、10年国債までマイナスに沈んだ時、多くの銀行が悲鳴を上げました。

もちろん日銀の当座預金へ一部マイナス金利が適応されるということもありましたが、それ以上に本業の短期で借りて長期で貸すというビジネスモデルが成り立たなくなることに危機感を覚えたからです。

マイナス金利でも短期金利より長期金利の方が高ければ鞘は抜けますが、例えばそのレベルが10bps(0.1%)と100bps(1%)では天と地ほどの差があります。

銀行はビジネスとして営業している以上、金利差による収益が人件費、販管費その他もろもろの費用を上回らないと利益を上げることができません。

そして、前者のような薄いスプレッドでは、到底利益を上げることはできません。

金利が低いと借り入れ需要が増えて経済が活性化するイメージがありますが、低すぎる金利というのはそれを超えてむしろ害になるのです(少なくとも銀行にとっては)

銀行株は高配当で金利上昇に強い

銀行株のもう1つのメリットは、高配当であるということです。

元来から

銀行株=高配当

という関係性が成り立つわけではないのですが、特にリーマンショック以降は銀行業界へのネガティブな見通しにより、株価が下がり、結果として高配当株となっています。

大手の銀行を見ても、配当利回りが3%を超える銘柄がずらっと並んでいます。

本来高配当銘柄は金利上昇に弱い

通常の高配当銘柄は金利上昇に弱いという特徴があります。

例えば食品や生活必需品といったディフェンシブな銘柄が代表です

金利が上がると、債券の魅力が上がり、このような利回りの高い銘柄の魅力が相対的に下がります。

そして、一般に高配当株は金利上昇局面では売り込まれるのです。

銀行株は高配当で金利上昇に強い

一方の銀行株は、既に述べたように金利上昇により本業の収益が改善する傾向があります。

つまり、高配当にも関わらず、金利上昇局面でも売り込まれにくいのです。

これはそもそも配当を狙って銀行株に投資している人が少ないことも一因です。

高配当が好きな人は、同時に株価の安定にも気を配ることが多いので、銀行のような景気敏感株は避けられることが多いのです。

話が少しそれましたが、高配当だけど金利上昇に強い、これが銀行株の大きな魅力です。

いい金利上昇と悪い金利上昇

このように、銀行株は基本的に金利上昇に強いわけですが、常に強いかというともちろんそういうわけではありません。

一般的に、金利の上昇には「いい金利上昇」と「悪い金利上昇」があります。

いい金利上昇

いい金利上昇とは、経済活動が活発になり、資金の借り入れ需要が増えることで起こる金利の上昇です。

このような局面においては、銀行にとっては貸出先が沢山あり、かつ金利差のスプレッドも抜けるため、収益が大きく膨らみます。

銀行株にとって最も理想的なのは、このいい金利上昇局面になります。

悪い金利上昇

悪い金利上昇とは、上記とは対照的に、ハイパーインフレが起こったり、債券の信用力(つまり国の信用力)が落ちたりして金利の上昇が起こることです。

文字通りネガティブな背景による金利の上昇です。

近年では例えばベネズエラがハイパーインフレを経験していますしギリシャは信用力の低下により大幅な金利上昇を経験しています。

このような局面においては、かならずしも銀行株を選択することが良いことにはなりません。

まず、いくら金利が上がったからと言って、経済環境が悪く借り入れ需要がなければ本業がうまく回りません。

また、ハイパーインフレの場合には金利もハイパーな上がり方をすることが多いため、瞬間風速的に銀行の保有する国債に大幅な評価損が発生します。

このように、悪い金利上昇の場合には必ずしも銀行株が有利なわけではないことには注意が必要です。

銀行株と金利上昇の関係のまとめ

以上をまとめます。

まず、銀行株は金利上昇に強いという特徴があります。

理由は金利が上昇すると、短期で借り長期で貸すという本業の収益が大きくなるからです。

一般的には高配当株は金利上昇に弱いのですが、銀行株はこのような特徴があるため、高配当にも関わらず金利上昇に強いのです。

高配当でかつ金利上昇に強い銘柄を探している方にはうってつけの投資対象と言えます。

一方で、あらゆる金利上昇に強いわけではなりません。

ハイパーインフレや国家の信用リスクの低下といったネガティブなことに起因する金利上昇の場合には、本業の収益の改善が見込まれないため、銀行株が有利ということにはなりません。

このような事態を想定する場合には、避けたほうが良い銘柄と言えます。

なお、念のため最後に付け加えておきますが、金利上昇に強いということは、逆に金利低下には弱いということです。

当たり前の話ですが、念のため記載しておきます(理由はこれまで述べてきたことを逆に考えてください)

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