資産運用業界で働いていた時よく聞かれた質問の1つは、
「何歳で年収1000万にいきますか?」
です。
人に収入を訪ねるのは失礼なことこの上ない話ですが、多くの人がお金について非常に興味をもっていることもまた確かです。
また、1000万というと、なんだか高給取りのイメージがあるため、いつくらいにその年収に到達するのかは非常に興味を持たれているようです。
ただ、個人的に思うのは、資産運用業界(いわゆるアセットマネジメント業界、もしくは運用会社)では、いつ年収1000万に到達するのかはそれほど重要ではないと思っています。
というのは、運用会社においては、(小規模の零細会社を除いて)年収1000万円に到達することは普通のことだからです。
それよりもむしろ、1000万を基準とし、そこからどれだけアップサイドが見込めるのかという点の方がより重要であると思います。
ここではそんな資産運用業界の年収事情についてご紹介します。
資産運用業界(アセットマネジメント)の年収の目安
資産運用業界は一般的に収入が良いことが知られています。
なぜ収入がいいかというと、まず金融という業種が相対的に収入がよく、また資産運用業界というのは多額のお金を扱うため、収入がよくなるという事情もあります(世の中の仕組みとしてお金が集まるところほど収入はよくなるのです)
ただ一方で、同じ金融業界の中で見ると、必ずしも収入が多いわけではありません。
というのは、運用会社は基本的に大手金融機関の子会社や系列会社であり、一般的に親会社の年収より低く設定されているためです。
例えば親会社が〇〇銀行や〇〇証券の場合、〇〇アセットマネジメントは〇〇銀行や証券よりも、平均年収は低くなるのです。
つまり、年収の序列は以下のようになります。
大手銀行・証券・保険会社 > 系列の資産運用会社
もちろん個人ベースで見ると、同じ30歳でも〇〇銀行のA君より〇〇アセットのB君の方が年収がよい、ということはありますが、全体の平均としては上記のような関係になります。
大手の銀行や証券、保険会社には年収は劣るが、それでもなお高収入というのが資産運用業界の年収の目安になります。
なお、銀行と証券、保険の中での収入の違いについては、以下のような感じになります(ここはそれほど詳しくないのであくまでイメージです)
平均的な人の年収:保険 > 証券 > 銀行
評価の高い人の年収:証券 > 保険 > 銀行
少なくとも言えることの1つは、証券は3つの中でも特に実力主義の要素が強いため、年収にバラツキが大きく、もらっている人は大いにもらっているということです。
年収1000万円に達する目安
では、冒頭で取り上げた、何歳で年収1000万円に到達するかという点をご紹介します。
資産運用業界の中でも、会社によって賃金カーブは異なり、また個々人の評価によっても年収は変わってきます。
このような要因はありますが、大まかな目安を示すと以下のようになります。
まあざっくりしていますがこんな感じです。
ただし、ここでのポイントは、資産運用会社であれば、大抵30代で1000万円に到達するということです。
もちろん資産残高が少なく、じり貧の会社の場合には1000万という年収は難しいかもしれませんが、よく新聞などで見る運用会社であれば、大抵30代で1000万円にと到達します。
規模によって1000万到達年齢は変わる
30代じゃ漠然としていてよくわからん!
30代でも30歳と39歳だと全違うじゃないか!
そんな意見が聞こえてきそうな気がします。
そこでもう少し30代1000万円を掘り下げて説明します。
まず、前提として、儲かっている会社ほど、年収は高くなります。
まあ当たり前の話ですね。
そして、資産運用会社の場合、儲かっているかどうかは、ほぼ預かり資産の大きさに比例します。
つまり、投資信託や投資顧問の残高が大きい会社ほど、給料もよいということです。
そこで、その運用会社が大手の金融機関に属していることを前提として、預かり資産が大きい会社とそうでない会社に分けます。
前者を大手運用会社、後者を中堅運用会社とします。
すると、年収1000万円に到達する年齢は以下のように分けることができます。
- 大手運用会社:30代前半
- 中堅運用会社:30代後半
まあ会社の儲かり具合(≒規模)によってこのくらい変わるということですね。
もちろん個々人では、大手運用会社でも評価が冴えずになかなか1000万円に行かなかったり、中堅の運用会社でも素晴らしいパフォーマンスを発揮して早々と1000万を超えるということもあります。
ここではあくまでも、平均的な目安としてはこうだということです。
目指すべき年収は1000万ではなく1500万
終身雇用という言葉が廃れてきて久しいですが、同じ企業でなくとも65歳くらいまで働くことを考えると、トータルで40年くらい働くことになります。
そして運用会社においては、働き始めてから、10年から15年くらいで1000万円に到達することになります。
つまり、1000万に到達してからの方が、サラリーマン人生は圧倒的に長いということです。
1000万という数字は大変切りはいいですが、資産運用業界においては、必ずしも目指すべき年収ではありません。
1000万は、遅かれ早かれほとんどの人が到達する水準の年収だからです。
多くの人が到達する地点を目標とするのは、あまりにも目線が低いでしょう。
資産運用業界で働く人であるならば、目標とする年収は1000万ではなく、1500万が適切です。
年収1500万の意味
上記のように、運用会社で働いていれば多くの人は年収1000万円には到達します。
しかしながら、1500万円まで到達する人はそこまで多くありません。
つまり、1500万円に到達するには、それ相応の努力や運が必要になってきます。
逆に、資産運用業界で1500万の年収を貰っていれば、かなりの高給取りかつ市場価値の高い人の仲間入りと言えます。
ここでは、先ほどの大手運用会社、中堅運用会社の2つに分けて、年収1500万円までの道筋を見てみます。
大手運用会社の場合
大手運用会社の場合、既に述べたように、平均的には30代前半で1000万に到達します。
ここまでは大抵の人が行くため、問題はその後です。
大手の場合、順調にいけば30代の内は年収が伸び続け、評価が非常に高い人であれば30代後半で、評価が一定上高い人であれば40代で1500万程度に到達します。
ここでのポイントは、全ての人が1500万に到達するわけではないということです。
1000万円くらいまでは割と誰でも上がっていくのですが、その後は「評価」の要素が大きくなり、この「評価」がついてこないと1500万円に到達するのは難しくなります。
何が「評価」になるかは職種により異なりますが、ファンドマネージャーであれば運用パフォーマンス、バックオフィスであれば上司の好み(好かれるか否か)が大きな鍵となります。
まあ上司の好みははっきりいって運の要素が強く、なんともいえないところがありますが、現実にはそういう理不尽なものにも左右されるということです。
まとめると、大手の運用会社であれば、役員などにならなくとも、管理職になれ、上司からよい評価が得られれば年収1500万円に到達することが可能です。
中堅運用会社の場合
中堅の運用会社の場合には、大手よりも1500万円のハードルは高くなります。
まず、30代後半で1000万に到達し、おおよそこのタイミングで管理職になるというケースが多いです。
そして、多くの会社がそうですが、管理職になると、その後の給料の伸びは鈍化します。
つまり、1000万円を超えた当たりで、年収が頭打ちになってしまうケースが多いのです。
まあ1000万円でも世間の水準からしたら十分に高給取りなので、それで満足できればそれでよいのですが、もちろん更に上を目指すという方法もあります。
中堅の運用会社の場合、年収1500万を得る方法は2つあります。
1つは社内で出世すること、もう1つは年収のよい会社に移ることです。
社内での出世
中堅の運用会社の場合、管理職になったくらいでは年収1500万円には到達しません。
せいぜい1200万くらいが関の山です。
ではこれより更に増やすにはどうしたらよいかというと、出世すればよいのです。
中堅の運用会社でも、部長クラスになれば1500万くらいの年収に到達することができます。
もちろんその上の役員にでもなれれば、自分で確定申告するくらいの年収(つまり2000万円)くらいにはなります。
1000万では満足できない!という野心家でお金が好きな方は、まずは社内で出世することを考えましょう。
年収のよい会社への転職
もう1つの年収1500万円到達への道は、年収のよい他社に転職することです。
既に述べたように、会社によって平均的な給与水準は異なるため、年収の高い会社に移ればそれだけ自分の年収も高くなる可能性が高まります。
ただしここで気を付けたいことがあります。
もしあなたが業界で名を知られているような有名人であれば、年収1500万円を超えるようなオファーが来るかもしれませんが、そうでなければいきなり1500万円で雇われるということはまずありません。
流石にどこの馬の骨かもわからない人に、いきなり年収1500万円は出せないのです。
1000万くらいのオファーであれば割とあるけど、1500万クラスは基本的に(有名でなければ)ない、これが資産運用業界の転職の際の目安です。
ですので、転職の際には、いきなり1500万円にこだわるのではなく、将来的に1500万に到達可能かどうかを見るということが大事です。
転職時のオファーが1200万円であったとしても、儲かっている会社であれば、その後収入が増え、1500万円に到達することが可能化もしれません。
もしくは自分の実力を存分に示し、会社から評価されれば数年後に1500万円に到達するかもしれません。
このように、転職の際には、そもそものオファーがいくらかという点と同時に、将来的にそこから上がっていけるのかどうかを見極める必要があります。
運用会社の年収まとめ
以上の話をまとめます。
まず、
「何歳で年収1000万に到達するか?」
という質問に対しては、
「30代で1000万」
というのが答えになります。
ただし、実際の到達年齢はどの会社に属するのか、その会社内での評価、にも依存します。
大まかな目安は、
- 大手運用会社では30代前半で1000万円
- 中堅運用会社では30代後半で1000万円
です。
また、運用会社で働く人の場合、実際に目指すべき年収は1000万円ではなく1500万円です。
1000万円はほとんどの人が到達するため、目標としては低すぎます。
1500万円に到達するには、
- 大手運用会社でよい評価をもらい、管理職以上になり社内外で存在感を示す
- 中堅の運用会社の場合、部長以上もしくは給料の良い他社に転職する
というのが一般的な条件です。
実際のところ、1500万円まで到達する人はそれほど多くありませんが、だからこそ目指すべきは1500万円と言えます。
なお、余談ですが、パフォーマンスが優秀で、替えの効かないファンドマネージャーの場合、属している会社の規模を問わず年収数千万という水準に達します。
このレベルになると、どこの会社でも引く手あまたのため、逆にどの会社にいてもそれ相応の報酬がもらえるということですね。
大いなる野望を秘めた方であれば、1500万とは言わず、報酬が青天井のスターファンドマネージャーを目指すのも面白いかもしれません。