自社株投資のメリットとデメリット。勤め先の業績リスクの見極めが重要

株式バリュエーション

会社によっては自社株買いの制度を設けているところもあります。

この自社株への投資について、意見が割れるのをよく耳にします。

もちろん自社株買いにはメリットとデメリットがあるから意見が分かれるわけですがそれぞれにもっともらしい理由があります。

また、自社株投資を行う際には、一般的なメリットデメリットのみを考えるのではなく、自分の属する会社の特性やリスクも考慮する必要があります。

ここではそんな自社株買いについてご紹介します。

自社株買いのメリット

インセンティブ(奨励金)

自社株買いのメリットは、なんといってもインセンティブが付くことです。

別名奨励金などともいわれますが、買い付け額の5%や10%といった金額が上乗せされて投資されます。

自社株買いのメリットはまさにこのインセンティブのみで、これがなければそもそも自社株買いをするメリットは全くありません。

会社の立場からすると、自社株を持ってもらうことで会社への帰属心を高めたり、業績への貢献を期待したりという側面もあります。

しかし、従業員の立場からすると、もちろん持ってる自社株が上がってくれるのはうれしいことですが、自分が業績に貢献して株価も上げられると考える人はほとんどいないでしょう(役員は除く)

つまり、従業員からすると、インセンティブのみがメリットでこれがないと自社株をやる意味はありません。

インセンティブ無しで自社株買いをするのは、自分の努める会社を愛してやまず、つぶれる時も一緒だと考えられるような一風変わった人くらいでしょう。

自社株買いのデメリット

リスクの集中

自社株買いのデメリットはリスクの集中です。

もし仮に自分が勤めている会社が倒産してしまったら、給料が出なくなるどころか、株式の価値まで0になります。

つまりダブルパンチを食らうことになります。

実際には柔軟な運用は可能

一般的にはデメリットはこのように語られることが多いですが、この例では物事を単純に捉えすぎです。

まず自社株は購入したら未来永劫保有しなければいけないものではありません。

自社の株価が十分に上がったと感じたり、キャッシュが必要になった時にはちゃんとした手続きを踏めば自社株の売却は行えます。

もちろん保有した自社株を全く売らず倒産した場合には、全額を失うことになるのですが、そうでなければインセンティブ分は儲かるのです。

確かにリスクが集中するのはその通りですが、実際には途中で売ることが可能なため、あまりにもリスクが強調されるように思います。

業種によって自社株買いのリスクは異なる

一般的に株式に投資する際には、その会社のリスクを考えます。

これと同じことを、自社株買いでも考える必要があります。

ただし、ここでの注意点は自社株買いは1社のみのため、その1社のリスクを考えるということです(つまり銘柄分散は考えない)

すると、その会社の属性により、自社株買いのリスクが大いに異なることがわかります。

業績が安定している企業とそうでない企業では自社株買いへのリスクが異なります。

業績が安定している企業

業績が安定している企業であれば、倒産リスクも小さく、自社株買いを行うことによるリスクはそれほど大きくありません。

このような会社の場合には、もちろんインセンティブの大きさにもよりますが、自社株買いをそれなりの規模で行うことは理にかなっています。

具体的には、元国有企業などは業績が安定しており、競争の障壁があり、また暗黙の政府保証もあるため自社株へかなり投資をしてもそこまでリスクは高まりません。

元国営企業というと、東京電力を思い出す方もいるかもしれませんが、あれほどの事故を起こしても株券は紙屑にはなりませんでした。

むしろここ半年くらいは堅調な業績を受けて株価が上がってきています。

つまり、このような企業は倒産確率が限りなく少ないため、自社株買いはかなり理にかなった投資になります。

業績の変動や競争が激しい業界

一方で業績が不安定であったり、競争が激しい会社の場合には、それなりの倒産リスクがあるため、自社株買いはかなりリスキーです。

このような会社ほど安定株主が欲しくて積極的にインセンティブを出したりするのですが、それでもやはりこのようは会社の自社株買いには慎重になるべきです。

仮につぶれなかったとしても、株価が長期低迷し、結局キャッシュを持っておいた方がよかったということにもなりかねません。

最適な自社株の保有比率

以上を踏まえた上で、個人的な自社株の保有割合の意見を申します。

業績安定企業

業績が安定した企業の場合、資産の30%を上限として自社株買いを行ってもいいのではないでしょうか。

30%という数字に何かしらかの根拠はないのですが、例えば仮に株価が半分になったとしても、資産の15%を棄損する程度という感覚で捉えられます。

いくら業績が安定しているとはいっても、やはり1つの株式に30%以上投資するのはリスクが高いと言わざるをえません。

業績不安定企業

一方、業績が不安定な会社の場合、10%くらいを上限にすべきです。

そもそも業績が不安定な会社に勤めていること自体がリスクです。

そこにさらに株式リスクを加えるのはリスキーとしかいいようがありません。

10%の根拠は明確ではありませんが、その程度であれば仮に紙くずになったとしてもそのまま10%を失うだけなので、全資産への影響は限定的だからです。

もちろん、このような会社の自社株買いを行う際には、それ相応のインセンティブが付くことが最低条件です。

まとめ

自社株買いはリスクが高いからやめた方がいいという意見をよく聞きますが、私は必ずしもそうは思いません。

もちろん既に述べたようにそもそもリスクの高い会社に勤めている場合には積極的に自社株を購入することは勧めませんが、いわゆるディフェンシブ株(業績が安定している株)で、かつおまけで政府保証もついているような会社では、それなりの規模の自社株買いは許容されると思っています。

むしろそのような会社に勤めていて、インセンティブも付くのに自社株買いをしないのはとてももったいないことだと思います。

自社株買いは、いいか悪いかの二元論だけではなく、勤めている会社のリスク特性とインセンティブの大きさも勘案して行うべきだと思います。

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