ESGスコアの問題点。業種の違いと大企業バイアス

株式ESG投資は近年のトレンドですが、まだ発展途上の分野でもあり、多くの問題も抱えています。

そもそも環境への影響や働きやすさ、ガバナンスの頑健性などの定性的な情報を、定量的な数字にどう落とし込めばいいかというところに大きな難しさがあります。

ここではESGスコア及びESG投資の問題点をご紹介します。

ESGスコアの問題点

ESG投資の元となるスコアはインデックスプロバイダーが中心となって算出しています。

この算出されるスコアがちょっと曲者です。

というのは、算出する業者により、スコアにかなりの違いがあるのです。

ある
業者は高いスコアを付与しているにも関わらず、他の業者は低いスコアをつけている。

このようなケースは多々あります。

例えば債券の信用力を表す格付け会社による格付けでは、ほとんど横並びのような評価がされることが多いですが(これはこれで問題かもしれませんが)、ESGはこれとは逆で、会社の平仄があっていません。

これは捉え方によっては各社で独自の評価をしていると見ることもできるのですが、投資家の立場からするととても使いにくいのです。

MSCIのスコアではパフォーマンスが良かったけど、FTSEだとそうでもなかった、というようなケースも出てくるわけです。

業者間で全くスコアを同じにする必要はないかと思いますが、少なくとも方向感くらいはあっていて欲しいところです。

業種による違い

ESGの中でも特にE(環境)については、比較が難しいです。

環境に与える影響が業種によりことなるため、単純な横比較ができないためです。

業種による偏りを調整するため、業種内での相対評価を行うという考えもあります。

確かに相対評価であれば業種による影響は軽減されますが、それでも問題は残ります。

例えばある業種は一生懸命に環境への取り組みを行い、他の業種がそうでなかった場合、一生懸命取り組んだ業種が全体からみると過小評価されてしまいます。

努力が逆に自分たちの首を絞めるという結果になってしまうのです

このように業種の違いに対し、スコアをどう算出していくのかはとても悩ましい問題なのです。

現在のところ最適解はないように思われますが、ある程度評価軸を統一していく必要があるように思います。

大企業バイアス

ESGスコアには他にもバイアスがあります。

それは企業規模による違いです。

全体感として、企業の規模が大きい方がよいスコアが付きやすく、規模が小さい程スコアが悪くなる傾向があります。

大企業の方がスコアが良くなる理由

平均的に大企業の方がスコアがいいのは、何もスコアを付与する業者が大企業を優遇しているからではありません。

大企業の方がスコアが高くなるのは以下のようなメカニズムで説明されます。

  • 大企業の方が経営資源に余裕があるESGへの対策を行う余裕がある人員やコストという面において)⇒ESGスコアが高くなる

要は大企業の方が余裕があるため、ESGに該当するような対策を行いやすく、それが高スコアにつながっているということです。

もちろん大企業がESGを意識した運営を行うことは好ましいですが、一方でESGスコアのみを意識した運営になっていないかという点は気になるところです。

ESGの評価のガイドラインは公表されているため、そのガイドラインを参考にスコアを上げるためだけに表向きを繕うことはある程度可能です。

つまり上辺だけのESG企業になることもできるのです。

投資家としては、こうしたことのないよう、各企業がESGの概念をしっかりと理解した上で、きちんと取り組んでくれることを期待します。

まとめ

ESGスコアの問題点は、ひとえにスコアの信頼性という点に集約できます。

何も各ベンダーが出しているスコアが信頼できないと言っているのではありません。

むしろ各ベンダーはしっかりとしたガイドラインに則り、スコアを付与しているものと推察します。

むしろ懸念しているのは、企業側の対応の方です。

ESGスコアを上げる為だけの表面的な対応だけでは、余計なコストを払った上にESGの本来の概念も体現できないという本末転倒な状態にもなりかねません。

この辺りは是非各会社の企業努力とともに、評価する側の業者にも上辺だけの評価にならないよう頑張ってほしいと思います。

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