現在、SMTシリーズやFunds-iシリーズなど、各運用会社が新興国債券(ドル建て・為替ヘッジあり)のインデックスファンドを発売しています。
この商品の特徴はいまいち個人投資家には浸透していなうように思われるため、この商品について掘り下げ、この商品がミドルリスク・ミドルリターンであることをご紹介します。
インデックスファンドの中では日陰のような存在の商品ですが、実はリスクリターンプロファイルとしては魅力のある商品です。
各金融商品のリスクプロファイル
よくファイナンシャルプランナーなどが、金融商品の説明をするとき、
- ハイリスク・ハイリターン:株式
- ミドルリスク・ミドルリターン:REIT
- ローリスク・ローリターン:債券
という記述をよく見ます。
しかしながら、この区分けは正しくありません。
まず、REITはミドルリスク・ミドルリターンの商品ではありません。
株式と同様にハイリスク・ハイリターンです。
REITは株式より利回りが高い商品なので、ミドルリスク・ミドルリターンというラベリングがされていると想像しますが、実際の過去のリスク・リターンで見るとほぼ株式と同様になります。
REITのリスクが株式並みに高いのはキャピタル部分が大きく変化するためであり、利回りの高さはリスクとは関係がありません。
新興国債券(ドル建て、為替ヘッジ)はミドルリスク・ミドルリターン
少し話が逸れましたが、ではミドルリスク・ミドルリターンの金融商品は何かというと、まさに新興国債券(ドル建て、為替ヘッジ)が該当します。
新興国債券(ドル建て)はドルベースで発行された債券のため、ドル円の為替リスクをとることになります。
関連記事:新興国債券の現地通貨建てとドル建ての違い
しかしながら、この新興国債券(ドル建て、為替ヘッジ)はその名の通り為替ヘッジがされているため、為替リスクはない商品になります。
そのため、価格変動要因は新興国の債券部分となります。
新興国債券を為替ヘッジなしで買うと、為替リスクが大きいのでかなり全体のリスクが高くなりますが、この商品の場合、為替リスクが消されているため、ミドルリスク・ミドルリターンの商品へと姿を変えたわけです。
過去の新興国債券(ドル建て、ヘッジ付き)のリスクリターン
事実確認として、過去5年間のリスク・リターンの各商品のプロットを見てみます(ソースはFunds-iのページ)
上の図で、オレンジの●が株式、青い●がREIT、緑の●が債券、四角い■が新興国債券(ドル建て、為替ヘッジ)となります(各丸の内訳はFunds-iのページでご確認ください)
これを見てもわかる通り、REITは株式並みのリスク・リターンとなっており、新興国債券(ドル建て、為替ヘッジ)こそがミドルリスク・ミドルリターンとなっていることがわかります。(ちなみに一番リスクの低い緑の丸が日本債券です)
正しい金融商品のリスクプロファイル
ということで冒頭の部分に戻ると、
- ハイリスク・ハイリターン:株式、REIT
- ミドルリスク・ミドルリターン:新興国債券(ドル建て、為替ヘッジ)
- ローリスク・ローリターン:日本債券、先進国債券(ヘッジ付き)
が正しいプロファイルとなります。
コストには注意が必要
信託報酬がやや高い
ただし、新興国債券へ投資する際には、コストに注意する必要があります。
昨今ではインデックスファンドのコストが大きく下がっており、魅力的な商品が増えてきています、
一方で、新興国債券に関してはそれほどコストが大きく下がっておらず、相対的に他の資産より高めに設定されています。
先進国株式や債券などであれば、0.2%を切るような信託報酬が設定されているものもありますが、新興国債券(為替ヘッジあり)については、概ね0.6%程度です。
信託報酬以外のコストも多めにかかる
新興国債券の場合、信託報酬以外のコストもやや多めにかかる傾向があります。
やはり新興国というのは投資しにくいため、その分余計にコストがかかってしまうのです。
具体的には売買コストやカストディーコストなどがかかりますが、これらと信託報酬を足し合わせると、年率1%を超えることもあります。
新興国債券の利回りは5~6%程度(2017年現在)ですので、利回りのうちの2割くらいをこれらのコストで持っていかれてしまうことになります。
ヘッジコストもかかる
新興国債券(ドル建て、為替ヘッジ)は、為替のヘッジをしているため、ヘッジコストがかかります。
ヘッジコストというのは、2国間の短期金利の差なので、必ずしもコストではなくあくまでもヘッジを行うための調整項の扱いが正しいです。
ただし、日本は歴史的に低金利が続いているため、基本的に他国の通貨をヘッジする際にはヘッジコストがかかります。
このケースでは日本と米国なので、この2国間の短期金利差を考えます。
日本は0%、米国は1.5%とすると、
1.5%-0%=1.5%
つまり1.5%がヘッジコストとなります。
為替の影響を排除するために、1.5%分利回りが低下するということです。
このヘッジコストは中央銀行の政策により大いに変わってきますので、この商品に投資する際にはモニターをしておく必要があります。
もしヘッジコストが高すぎて新興国債券の高い利回りを享受できないような環境になった時には、投資を減らしたり、止めたりするのも1つの方法です。
このように、新興国債券(ドル建て、為替ヘッジ)はいろいろなコストがかかってくる商品になります。
それでもまだそれなりに高い利回りを提供してくれる商品なのですが、コストという点については留意しておく必要があります。