新興国株式のバリュエーションの評価方法。先進国と比較してはいけない

リスク新興国株式の評価は一筋縄ではいきません。

一般的にはバリュエーションや成長性などが評価の軸となりますが、これらの指標の取り扱いには注意が必要となります。

特に、先進国に比べ、新興国の場合には「くせ」が強いので、先進国と同じ視点での評価行うことは困難です。

ここでは、新興国株式のバリュエーション評価を行う方法と注意点をご紹介します。

バリュエーションはクロスセクションで評価してはいけない

まず、新興国のバリュエーションを評価する際には、クロスセクションで評価してはいけません。

クロスセクションはシンプルな方法ではありますが、ミスリードを生みます。

クロスセクションの評価の意味

クロスセクションでの評価というのは、他の国や地域に比べ、その国が割安か割高かを評価することです。

同じ時点において、横軸に評価していくため、クロスセクションによる比較と言います。

そして、使う指標は一般的なPBRやPERといったものです。

先進国と比べてはいけない

このクロスセクションでの評価でよく見かけるのが、新興国を先進国と比べることです。

例えばPBRの絶対水準を比較し、新興国が1.5、先進国が2だったら、新興国の方が割安と評価するといったようなことです。

歴史的に見て、新興国のバリュエーションは先進国よりも割安です。

つまり、通常の状態においては、新興国の方がクロスセクションの比較では割安に見えるのです。

しかしながら、長期的に新興国の方が先進国よりリターンが高いということはありません。

要するに、先進国に比べると、新興国は万年割安なわけです。

新興国と先進国を単純に比べ、どちらが割安かを判断することはあまりに稚拙といえます。

時系列での評価

バリュエーションを評価する方法には、大きく分けてクロスセクションと時系列の2つがあります。

クロスセクションは既に述べた通りですが、時系列は、自分自身の過去の水準に比べ、今の水準がどうかを評価する方法になります。

新興国の場合、個別の国の個性が強いため、クロスでの評価は困難です(というかワークしません)

一方で、時系列の比較であれば、自分自身との比較になるため、同じようなものを相対的に比較することになります。

こちらの方が新興国株の場合、ワークすることが多いです。

例えば、新興国全体の足元のPBRが1.5で、過去の平均値が2だとすると、幾分割安と評価することができます。

仮にこのとき先進国株のPBRが1.3だとしても、クロスセクションでの評価はあまり意味がないため、割高ということにはなりません。

あくまで時系列でみてどうかを評価するということです。

先進国株との評価も可能

先進国株式との単純なクロスセクションの比較はあまり意味がないと申しましたが、先進国株式と相対的に評価する方法もあります。

少し複雑になりますが、クロスセクションと時系列を組み合わせるという方法です。

例えば、

  • 先進国株:過去平均PBR3、直近のPBR4
  • 新興国株:過去平均PBR2、直近のPBR3

とします。

まず、先進国株と新興国株の過去の相対的な関係は、3:2です。

つまり、先進国株のPBRが新興国株に比べ、1.5倍というのが通常時の倍率になります。

一方で、足元のPBRを見ると、先進国株は新興国株の1.3倍程度になっています。

これは、通常時に比べ、新興国株式の方が相対的にPBRが高くなっていることを意味します。

つまり、この場合、新興国株は割高と判断できます。

ポイントは、直近の絶対値を比べるのではなく、過去の平均的な相対間に比べ、高いか安いかを判断するということです。

このような形であれば、先進国株式と新興国株式の相対的な評価を行うことができます。

新興国の中でも個別に評価する

新興国の中でも、これまでの議論と同じように個々に評価する必要があります。

特に新興国の場合、規制が強かったり、産業構造がまるで違ったりと国による違いが大きいため、各国を同じ数字で評価をすることは困難です。

なので、個別の国について評価をするのであれば、既に述べた時系列で評価する、もしくはクロスと時系列を組み合わせるという手法を取る必要があります。

まとめ

新興国株式を評価する際には、直近のクロスセクションで評価するとミスリードになります。

歴史的に新興国の株式は先進国よりバリュエーションが低く評価されているため、単純に絶対値での比較を行うことにあまり意味がありません。

評価の方法としては、

  • 自分自身の時系列での評価
  • クロスと時系列の組み合わせ

のどちらか、もしくは両方を使うことをおすすめします。

これは新興国に限った話ではなく、先進国にも言えることです。

例えば、日本の場合、絶対的なバリュエーション数値は非常に割安ですが、リターンがそれについて行っていないことは周知の事実でしょう(かつては恒常的に割高でしたが・・・)

新興国の場合、特に国ごとの特性が異なるため、先進国より更に単純なクロスセクションでの評価には注意が必要ということになります。

なぜ新興国株式の方が歴史的にバリュエーションが低く評価されているのか、という話については、気が向いたらどこかで記事にしたいと思います。

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