モメンタム投資とは?概要とパフォーマンス及び問題点

投資モメンタム投資は、株式投資の中でもよく知られた運用戦略の1つです。

モメンタムとは日本語に訳すと「勢い」のことで、その名の通り勢いのある株式に投資する戦略です。

問題はなにをもって「勢い」とするかですが、一般的には過去のリターンの良さが投資の尺度として使われます。

つまり過去のパフォーマンスのよい銘柄にそのままのっかるというのがモメンタム戦略です。

ここでは、モメンタム戦略の概要とパフォーマンス、そして問題点についてご紹介します。

モメンタム戦略とは

モメンタム戦略とは、過去のパフォーマンスがよかった銘柄に投資する戦略です。

財務情報を使わずに、過去のリターンのみを投資尺度とするため、テクニカル分析の一種でもあります。

非常に単純な戦略ではありますが、国によっては良好なパフォーマンスを記録した時期もあり、また株式マーケットのアノマリーの1つとしても知られています。

モメンタムの定義

モメンタム投資には過去のパフォーマンスを使用しますが、過去どのくらいの期間を使用するかという点には個性があります。

比較的多いケースとしては、

  • 過去12か月のリターン
  • 過去12か月のリターン(直近1か月は除く)
  • 過去半年のリターン

などが使われます。

どれを使うのかは好みによるところが大きいですが、一番よく使われるのは2番目の「過去12か月のリターン(直近1か月は除く)」ではないでしょうか。

これは、過去12か月のうち、直近の1か月を除いた11か月分のリターンを使うということです

なぜ直近1か月を除くかというと、

  • 直近はリバーサルが起こりやすい
  • ポートフォリオ構築のために時間が必要

といった理由があります。

いずれにせよ、過去のパフォーマンスがよい銘柄にそのまま乗っかって投資するのがモメンタム戦略となります。

モメンタム戦略のパフォーマンス

モメンタム戦略のパフォーマンスは、地域によりかなり差があることが知られています。

つまり、モメンタムがよく効く地域もあれば、そうでない地域もあるということです。

日本では効かない

日本の場合には、モメンタムは有効ではありません。

過去の検証においても、モメンタム戦略はアルファを生み出していません。

むしろ平均的にはマイナスのアルファとなることが多いです。

地域によりモメンタムの有効性は異なりますが、日本は最もモメンタムが効かない地域の1つに挙げられます。

なぜ日本ではモメンタムが有効でないのかは大きな謎ですが、理由の1つとして、日本ではモメンタムの逆のリバーサル効果がよく効くことが挙げられます。

米国では有効

一方のファイナンス先進国の米国では、過去の検証においてモメンタム効果は有効でした。

株式投資で使われるファクターとしては、モメンタム以外にもバリューやクオリティ、小型、低リスクなど様々なものがありますが、過去数十年にもわたる長い検証においては、モメンタムのパフォーマンスが最も優れています。

まあなんとなく気質的にも米国はモメンタムが効きそうな気配はありますが、実際に勝ち馬に素直に乗るモメンタムは米国では有効な投資戦略です。

この辺りに日本と米国の株式市場の特徴の違いが表れているように思います。

モメンタム戦略の問題点

上記のように、米国では非常によくワークしていたモメンタム戦略ですが、もちろん問題点もあります。

ここでは2点、モメンタム戦略の問題点をご紹介します。

高い売買回転率

モメンタム戦略の売買回転率は非常に高いです。

例えばS&P500をユニバースとし、過去のパフォーマンス上位100銘柄を保有し、月次でリバランスするモメンタム戦略を実行すると、年間の回転率は200%を軽く超えていきます。

好調の銘柄というのは毎月入れ替わりが激しいため、モメンタム戦略を忠実に実行すると回転率がとても高くなってしまうのです。

もちろん高い回転率は売買コストによりパフォーマンスを押し下げます。

中には、売買コストを控除すると、モメンタム戦略は有効ではないという検証もあります。

売買回転率を下げるには、リバランスの頻度を下げればよいのですが、そうすると今度はパフォーマンスが劣化します。

モメンタム戦略は鮮度が重要なため、年1回のリバランスでは十分にモメンタムのリターンを享受できないのです。

高い売買回転率とリバランスの頻度をどうバランスさせるかが、モメンタム戦略を実行する上でのポイントになります。

ダウンサイドリスクが大きい

モメンタム戦略のパフォーマンスには大きな特徴があります。

相場が良好な時はモメンタム戦略のパフォーマンスも概ね良好に推移します。

良好なマーケットの更に上を行くパフォーマンスを実現することが多いです。

問題はマーケットが下落した時です。

マーケットが下落する際には、それまで大きく買われてきた銘柄ほど、大きく売り込まれる傾向があります。

つまり、モメンタムに該当する銘柄というのは、下落時にマーケットより大きく下げる傾向があるのです。

相場が良好な時に大きく稼ぎ、相場が崩れるとガツンとやられる、というのがモメンタム戦略の特徴です。

そのため、下げ相場で大きくやられることに対するプレミアムがモメンタム戦略のアルファの源泉ではないかという仮説も存在します。

モメンタム戦略のまとめ

以上、モメンタム戦略をまとめます。

まず、モメンタム戦略は過去にパフォーマンスのよかった銘柄に投資するという非常にシンプルな戦略です。

非常にシンプルではありますが、米国では過去高いパフォーマンスを記録してきた投資手法でもあります。

一方で日本市場での有効性は高くありません。

モメンタム戦略の問題点は、売買回転率が非常に高いことです。

一般的なアクティブファンドの回転率に比べ、数倍の回転率となるため、そのままこの戦略を実行することは現実的ではありません。

実際には回転率を抑えながら、パフォーマンスの既存を抑えるような工夫が必要です。

また、モメンタム戦略は下げ相場に弱いという弱点があります。

下げ相場ではマーケット以上に下落する傾向があるため、これがモメンタム戦略のプレミアムにつながっているという仮説もあります。

実際プロの間では、モメンタム戦略の評判はよくありません。

というのは、単純に過去のパフォーマンスを見て投資しているだけなので、テクニカル分析と変わらない(というかテクニカル分析の一種)からです。

クオンツファンドの戦略としてモメンタムを組み入れることはしばしばありますが、ファンダメンタルズを重視したアクティブマネージャーからは、きわもの的な目で見られることもある戦略です。

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