高配当株式投資の問題点。配当への課税でパフォーマンスは年率0.5%低下する

パフォーマンス配当利回りの高い株式への投資は人気があります。

定期的に配当としてキャッシュが支払われるため、投資している実感が湧き、気分的にもいいものです。

一方で、株式の配当を受け取る際には、約20%の税金がかかります。

この税金により、受け取る配当額が減ることはもとより、更に配当再投資による複利効果も薄れてしまいます。

この税金がパフォーマンスに与える影響はどの程度なのでしょうか

ここではいくつかの前提を置いたうえで、配当への課税がパフォーマンスに与える影響を計測しましたのでご紹介します。

前提条件

この手のシミュレーションをする際には、まず前提となる条件を設定する必要があります。

ここで用いた設定は以下の通りです。

比較の対象

配当がある場合とない場合で、両者のパフォーマンスの差を調べます。

配当がある場合は、課税された後の配当額を再投資して運用し続けます。

計測期間

投資期間10年及び20年の2パターンで試算します。

投資期間終了時に売却し、売却益への課税も考慮したパフォーマンスを求めます。

株式リターン

配当がある場合は、キャピタルゲインを4%、インカムゲインを3%と置きます。

配当は後者のインカムゲインに該当します。

一方、配当がない場合は、キャピタルゲイン7%とします。

つまり、両者のトータルリターンを同じ7%とし、配当への課税の影響を調べます。

配当への課税がパフォーマンスに与える影響の試算

運用期間が10年の場合

以上の前提条件をベースに、100万円を10年間運用した場合のパフォーマンスは以下の通りです。

運用年数 配当あり 配当無し
0 100 100
1 106 107
2 113 114
3 120 123
4 128 131
5 136 140
6 145 150
7 154 161
8 164 172
9 175 184
10 186 197
累積リターン 86% 97%
税控除後 69% 77%
年率リターン 5.4% 5.9%

当初の100万円が、配当がある場合は186万円になり、ここから売却時の税金20%を控除すると累積のパフォーマンスが69%、年率換算で5.4%程度です。

一方、配当がない場合は、10年後に197万になり、売却時の税金を控除しても77%の累積リターンとなります。これは年率5.9%に相当します。

配当課税の影響は年率0.5%

両者を比較すると、配当課税の影響がわかります。

5.4%(配当あり)-5.9%(配当なし)=-0.5%

つまり、同じトータルリターンであれば、配当を支払うことにより、年率0.5%パフォーマンスが棄損することになります。

ここでは前提として配当利回りを3%としていますが、もちろんこれより配当利回りが大きければ棄損する割合も大きくなり、逆に小さければ棄損される割合も小さくなります。

運用期間が20年の場合

次に、運用期間がより長く、20年の場合を想定します。

シミュレーションの結果は以下の通りです。

運用年数 配当あり 配当無し
0 100 100
1 106 107
2 113 114
3 120 123
4 128 131
5 136 140
6 145 150
7 154 161
8 164 172
9 175 184
10 186 197
11 198 210
12 211 225
13 224 241
14 238 258
15 254 276
16 270 295
17 287 316
18 305 338
19 325 362
20 346 387
累積リターン 246% 287%
税控除後 197% 230%
年率リターン 5.6% 6.1%

配当がある場合は、当初の100万が346万になります。

ここから売却時の税金を控除すると、累積で197%、年率で5.6%のパフォーマンスとなります。

一方の配当がない場合は、20年後に387万になります。

売却時の税金を控除すると、累積で230%、年率で6.1%のパフォーマンスとなります。

両者のパフォーマンスの差をとると、

5.6%(配当あり)-6.1%(配当なし)=-0.5%

となり、この場合も年率0.5%程度、配当への課税によりパフォーマンスが棄損していることがわかります。

毎月分配型投信との類似性

高配当株式投資は、毎月分配型投信と類似点があります。

毎月分配型の投信のメリットは毎月分配金がもらえるのがうれしいということです(つまり、気持ちの問題です)

一方でデメリットは分配金を払い出すことにより、複利効果が薄れてしまうことです。

これと同じことは高配当銘柄にも当てはまります。

もちろん毎月分配型投信とは配当の頻度は異なりますが、定期的な配当がうれしいという点では同じです。

一方でこの配当の払い出しにより、複利効果が薄れてしまうのは毎月分配型と同じ構図です(もちろん毎月分配の方がより複利効果の棄損は大きいですが)

この配当がもらえてうれしいという気持ちが、年率0.5%というパフォーマンスに見合うかどうかが、高配当銘柄へ投資する際の判断材料となります。

配当への課税の影響まとめ

まとめると、以下のようになります。

まず、トータルリターンが同じ銘柄があった場合、配当を出す銘柄の方が配当を出さない銘柄よりパフォーマンスは悪くなります。

このパフォーマンスの悪化度合いは、配当利回りが高いほどより大きくなります。

一方で、投資期間にはあまり影響を受けません。

標準的な配当利回り3%を仮定すると、配当への課税によるパフォーマンスの悪化は概ね年率0.5%程度です。

これは期間が10年でも20年でもほとんど変わりません。

このパフォーマンスの差は複利の効果で説明されます。

毎年配当が払い出されるとそのたびに税金が引かれ、複利効果が低減します。

配当を支払わない場合にも、売却時に税金を支払いますが、これまで税金の支払いによるパフォーマンスの棄損がなかった分、元本はより大きくなっています。

配当狙いの投資はとても人気がありますが、このように長期投資を考える際には配当が支払われることによる税金というコストにも目を向ける必要があります。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする