等ウェイトインデックスはシンプルだがパフォーマンスの良いスマートベータ

パフォーマンスチャートスマートベータという言葉はここ数年で広く用いられるようになりました。

ただ一口にスマートベータといっても、その中身は非常に多岐に渡ります。

また人によりスマートベータの定義も異なり、どこまでがスマートベータでどこからがそうでないのかも区別が付きにくくなっています。

このようにスマートベータというのは定義が曖昧なものなのですがここではこれらスマートベータの中でも最もシンプルな形態である等ウェイトインデックスのメリットとデメリットをご紹介します。

等ウェイトは実にシンプルな手法ですが、実は様々なプレミアムを内包し、パフォーマンスも良好であるという特徴があります。

時価総額加重型インデックスの弱点

等ウェイトのスマートベータを論じる前に、等ウェイトの対比としてTOPIXをはじめとした時価総額加重型のインデックスの弱点を簡単に紹介します。

時価加重型の指数は、その名の通り時価で加重した指数です。

そのため、割高な株のウェイトが増え、割安の銘柄を減らすという特徴(弱点)があります。

時価加重型なので、価格が上がり時価総額の増えた銘柄のウェイトが増え、下がった銘柄のウェイトが減るのは自明のことです。

この特性により、時価加重型指数は順張りの要素を内包することになります。

また、時価総額の大きな銘柄のウェイトが大きくなることで、大型株寄りのバイアスも内包することになります。

これが時価総額加重型のインデックスの持つ特徴(もしくは弱点)となります。

等ウェイトインデックスのメリット

では、ここからは、時価加重型のインデックスに対し、等ウェイト型インデックスがどのような特徴を持ち、どのようなメリットをもたらすことが期待されているのかを説明します。

等ウェイトの定義

等ウェイトはスマートベータの中でも最もシンプルな形態です。

対象銘柄を時価加重ではなく、等ウェイトで持つというだけの代物です。

シンプル過ぎてスマートベータとは言えないのではないかという向きもあります。

しかしながら、実はこの等ウェイトポートフォリオはリスク対比のリターンでかなり良好なパフォーマンスを示すことが知られています。

なぜ等ウェイトポートフォリオのパフォーマンスはいいのでしょうか?

背景には以下の4つの要因があります。

  • バリュー効果
  • 小型株効果
  • リバーサル効果
  • リスク分散

バリュー効果、小型株効果

前述のように時価加重型のインデックスには大型、順張りという特徴があります。

一方でウェイトのつけ方を等ウェイトにすると、大型株のウェイトが削られ、小型株のウェイトが上がることになります。

つまり小型株へのエクスポージャーを持つことで、小型株効果が享受できることになります。

また、定期的に等ウェイトに戻すことで、割高な銘柄を売り、割安な銘柄を買うことになりますので、バリューに対しエクスポージャーを持つポートフォリオとなります

リバーサル効果

リバーサル効果というのは、いわゆるリターンリバーサルのことで、大きく上がった銘柄はその後下がりやすく、逆に大きく下がった銘柄はその後上がりやすい傾向のことをいいます。

等ウェイトインデックスは定期的に等ウェイトへリバランスするため、上がった銘柄を売り、下がった銘柄を買うことになります。

つまりリバーサル効果を享受しやすいことになります。

リスク分散

時価加重型のインデックスは大型株への偏りがあるため、ポートフォリオ全体のリスクが大型株により支配されやすい傾向にあります。

一方で等ウェイトの場合には各銘柄のウェイトは同じため、特定の銘柄に全体のポートフォリオのリスクが影響される度合いが少なくなります。

そのため、ポートフォリオ全体で見ると、リスクが減少しやすい傾向があります。

ただし、一般的に大型株より小型株の方がリスクが大きく、またポートフォリオのリスクは各銘柄間の相関にも依存しますので、等ウェイトにすると必ずリスクが低くなるわけではありません。

この点は注意が必要かと思います。

良好なパフォーマンス

このような効果を内包することにより、過去等ウェイト型インデックスは良好なパフォーマンスを示してきました。

ここでは詳細な数字は割愛しますが、例えば過去10年や20年といった期間でTOPIXの時価ウェイト型と等ウェイト型の比較をすると、等ウェイト型が圧勝します。

もちろん過去特に日本株市場ではバリュー株効果、小型株効果、リバーサル効果が観測されたことがその背景になります。

将来に渡ってこれらの効果が持続するかどうかは定かではありませんが、もしこれらのプレミアムの存在を信じるのであれば、等ウェイト型のインデックスは有力な投資先候補となります。

等ウェイトインデックスのデメリット

長々と等ウェイトインデックスのメリットを語ってきましたが、投資の世界においてフリーランチはありません。

つまり等ウェイトインデックスにもデメリットが存在します。

大まかなデメリット(及び懸念点)は以下の3点です。

  • 売買回転率が(相対的に)高い
  • 内包するファクターの将来的な有効性
  • 運用のキャパシティ制約

売買回転率が高い

TOPIXのような時価総額加重型のインデックスは回転率が極めて低いです。

文字通り時価総額で加重するため、銘柄の新規上場や上場廃止、コーポレートアクションなどのイベントがなければ売買の必要がないためです。

一方で、等ウェイト型のインデックスの場合には定期的な売買が必要です。

等ウェイトを謳っている以上、できるだけ各銘柄のウェイトを等しくしておく必要があるためです

このような売買が必要なため、等ウェイト型のインデックスは時価総額型よりも売買回転率が高くなります。

ただ、実際にどの程度高くなるかはリバランスの間隔に依存します。

年一回のリバランスであればそれほど回転率は高くありません。

せいぜい40%程度で、これは平均的なアクティブファンドの回転率よりも低い数字です。

もちろんリバランスの頻度を上げるほど、回転率は上がります。

ただ投資可能なインデックスという前提で考えると、年一回程度のリバランスでよいのではないかと個人的には思います

ファクターの将来的な有効性

前述のように、等ウェイトインデックスはバリュー、小型、リバーサルというファクターに対しエクスポージャーを持ちます。

これは言い換えると、これらのファクターへベットしているということです。

これまでは特に日本ではバリュー効果は非常によく効き、小型株効果もリーマンショック後を中心に非常によく効いていました。

リバーサル効果についても、日本ではモメンタムが効かない代わりにリバーサルがとてもよく効くマーケットでした。

これらがこれまでの等ウェイトインデックスのパフォーマンスに寄与してくれたわけですが、今後もこれらのファクターが有効であるという確証はありません。

もし日本株マーケットの特徴や癖のようなものが今後も続くと仮定するのであれば、これらのファクターは引き続きパフォーマンスに寄与するかもしれませんが、マーケットの構造が変わるのであれば、これまで効いてきた分逆に効かなくなる(アンダーパフォームの原因となる)可能性もあります。

つまり、過去のパフォーマンスは将来を保証しないということです。

この辺りは、投資家自身の相場観や、ファクタープレミアムの存在を信じるかどうかという投資哲学にも通じる問題かと思います。

運用のキャパシティ制約

前述のように、等ウェイトインデックスは時価ウェイトに比べ、小型株寄りのポートフォリオになります。

そのため、小型株をより多く保有する必要があります。

一般的に、大型株よりも小型株の方が売買高が少なく、また時価総額も小さいため売買が難しい傾向にあります。

そのため、ある一定以上の額を小型株に投資すると、その投資自体が小型株の価格に影響を与えてしまうことがあります

つまり買いたい値段で買えず、売りたい値段で売れないということですね。

もしくは売買するために、余計なスプレッドを支払う必要があるということです。

このようなマーケットへのインパクトはもちろんパフォーマンスに悪い影響を与えます。

そして、シミュレーション上はパフォーマンスがよかったのに、実際にマーケットで運用するとこれらのコストが嵩み、思うようにパフォーマンスが出ないということもあります。

このように等ウェイトインデックスは小型株へのインパクトが大きい為、大きな金額を運用することが難しくなります。

大きな金額の運用が難しいということは、ファンドを運用する側からするともらえるフィーに上限があるということなので、ファンドを組成するモチベーションの低下につながります。

等ウェイトインデックスはシンプルながらパワフルな特徴を持った戦略であるのですが、世に出ているファンドがあまりないのはこのような背景もあると考えられます。

等ウェイトインデックスのまとめ

以上、等ウェイトインデックスのメリットデメリットをまとめると以下のようになります。

メリット

  • シンプルでわかりやすい
  • 長期的にプレミアムが見込まれるファクターを内包している
  • 各銘柄のリスク分散に優れる

デメリット

  • (時価ウェイトに比べると)売買回転率が高い
  • 内包されているファクターの将来的なパフォーマンスは未知
  • 小型ティルトにより運用キャパシティに制約がある

個人的には等ウェイトインデックスは好きで、少なくとも時価ウェイト型よりも優れていると考えています。

ただ現実的な問題として、残念ながら等ウェイト型のファンドはほとんど見当たりません。

今後、時価ウェイト型インデックスと同じくらいの信託報酬で等ウェイト型のインデックスファンドが登場することを密かに期待しています