高配当株式投資のメリットデメリットとパフォーマンスがいい理由

株式投資高配当株式投資は、非常に人気の高い投資スタイルの1つです。

近年ではスマートベータの1つとして挙げられることもある戦略です。

戦略の中身はいたって簡単で、配当利回りの高い銘柄を買って、チャリンチャリンと配当をもらうというものです。

ただ、きちんと高配当戦略を実行しようとすると、セクターの配分はどうするか、何銘柄持つのか、各銘柄のウェイトはどうするかなど、考慮すべき点は数多くあります。

ここでは、このような細かい点はひとまず置いておいて、高配当株式投資のメリットとデメリットそしてなぜ高配当株式投資のパフォーマンスがよいのかをご紹介します。

高配当株式投資のメリット

収益の実感が得やすい

高配当銘柄に投資をすると、決算期毎にそれなりの額の配当が払い出されます。

この配当は自身の口座に振り込まれるため、「儲かっている」という実感を得ることができます。

この感覚が好きで、高配当銘柄投資を実践している方はたくさんいます。

長期的な投資を考えるのであれば、配当としてキャッシュを払い出されるよりは、その額を複利で運用した方がパフォーマンスはよくなるのですが、いかんせん人間は目の前の「にんじん」に弱い為、配当を大変好みます。

この辺りのロジックは、「毎月分配型の投信を好む投資家」と同じかもしれません。

下げ相場に強い

高配当銘柄にはディフェンシブ銘柄が多いです。

ディフェンシブ銘柄とは、別名枯れた銘柄とも言えますが、要は成長性は小さいものの、堅実に利益を出すような企業群です。

このような銘柄は利益を内部留保してもあまり使い道がない(投資先がない)ため、配当性向が高くなる傾向があります。

つまり、高配当銘柄になりやすいのです。

このように、高配当銘柄にはディフェンシブ株が多いため、ベータが概して低くなります。

そのため、下げ相場においては、マーケット全体に比べ下げにくくなります。

この下げ相場に(相対的に)強いというのは、高配当銘柄の利点の1つです。

エージェンシーコストの低減

エージェンシーコストとは、株主と経営者の利害が異なることにより発生するコストを指します

例えば、会社の利益を株主の為に使わずに、社長室を豪華にしたり、必要のない高級な車を経費で買ったり、収益性の低い事業に投資したりといったことが挙げられます。

高配当銘柄にはこのエージェンシーコストを削減する効果があります。

高配当銘柄とは、その名の通り利益の多くを配当として株主に還元しているため、利益を変なことに使われてしまうリスクを下げることができるのです。

もし、十分な利益を出し、めぼしい投資先がないにも関わらず、株主に利益を還元しようとしない会社は、大きなエージェンシーコストの存在が疑われます。

過去のパフォーマンスがいい

高配当株式投資というのは、過去のパフォーマンスが良好でした。

日本では特に有効でしたが、海外でも概して高配当銘柄のパフォーマンスは良好に推移しています。

なぜ高配当株式のパフォーマンスがいいのかは、以下に少し詳細に説明します。

高配当銘柄のパフォーマンスがよい理由

株式リターンの分解式

株式のパフォーマンスを考える際には、以下の3つの要素に分解するとわかりやすくなります。

株式リターン=バリュエーションの変化+利益成長率+配当利回り

つまり、株式リターンは「バリュエーションの変化」と「利益成長率」と「配当利回り」の3つの要素に分解できるということです。

バリュエーションの変化

バリュエーションの変化は、バリュエーションの水準が切り上がることにより生まれるリターンです。

例えばPERが12から15に上がると、

バリュエーション変化によるリターン=15/12-1=25%

つまり25%のリターンが生まれます。

利益成長率

これは単純にその銘柄の利益の成長率です。

例えば、今期の利益が100億円、来期の利益が120億円であれば

利益成長によるリターン=120/100-1=20%

となります。

配当利回り

これはそのまま配当利回りの数字になります。

配当利回りが3%であれば、そのままこの部分のリターンは3%となります。

高配当株式のリターンの源泉

再度株式リターンを3つに分解した式を記載します。

株式リターン=バリュエーションの変化+利益成長率+配当利回り

この3つの要素から、高配当株式のリターンの源泉を考えます。

まず、高配当という特徴のため、3項目の配当利回りがリターンのドライバーとなります。

ただ高配当銘柄の面白いところは、リターンのドライバーがここだけに留まらない点です。

配当利回りは1株当たりの配当額を株価で割ったものです。

式で書くと、

配当利回り=(1株当たりの配当額)/株価

となります。

ここからわかるのは、分子の配当額が大きければ配当利回りは高くなりますが、同時に株価が低くなれば、配当利回りが高くなるのです。

つまり、

株価の低下⇒配当利回りの上昇

というプロセスから、高配当銘柄というのはバリュー株の要素も含んでいることになります。

バリュー株のリターンのドライバーは3要素の式の中の「バリュエーションの変化」になります。

低いバリュエーションが修正される過程で、バリュー株はパフォーマンスを生むのです。

高配当銘柄はこのバリュー株の特徴も内包しているため、3つの要素のうち、「配当利回り」及び「バリュエーションの変化」の2つからリターンを得られることになります。

このことが高配当銘柄のパフォーマンスが良好な理由になります。

ちなみに蛇足ですが、バリュー株投資は既に述べたように「バリュエーションの変化」を狙った投資であり、その対極と言われるグロース株投資は「利益成長率」を狙った投資となります。

高配当株式投資のデメリット

これまで高配当株式投資を推奨しているかのごとく良い点を述べてきましたが、もちろんデメリットもあります。

ここでは2つのデメリットをご紹介します。

配当にかかる税金による福利効果の低減

高配当銘柄の場合、定期的にそれなりの額が振り込まれるため気分がいいと申し上げましたが、実はこの点はデメリットでもあるのです。

というのは、配当が払い出される際には税金がかかります。

配当額が10000円だとしても、税抜後では8000円程度になってしまいます。

もちろん、配当が払い出されなかったとしても、最終的に銘柄を売る際には税金がかかるのですが、問題は配当の払い出しにより複利効果が薄れてしまうということです。

長期的に株価が右肩上がりで成長するのであれば、配当金は払い出さず、内部留保して複利で増えてくれた方がパフォーマンスは向上します

高配当銘柄は、この複利の効果をある程度棄損してしまっているのです。

高配当銘柄投資の過去のパフォーマンスを見る際には、この税金による複利効果の棄損を考慮せずに表示しているケースが多いため、注意が必要です(いわゆるグロスリターンは税金を考慮していません)

上げ相場に弱い

メリットのところで下げ相場に強いというメリットを述べましたが、これは裏を返すと上げ相場においては、マーケットに劣後するということです。

高配当銘柄はベータが低い傾向にあるため、上げ相場にはついて行きにくくなります。

「配当はもらってるけど、マーケットには負けているじゃん!」

ということが往々にして上げ相場において起こります。

上げ相場で上がらないということではなく、上昇率が劣後するという意味ですので、別にそれなりに上がってくれればいいよという方には問題にはならないかもしれません。

一方で、マーケットが上がるときには、もっともっと上がって欲しいというアグレッシブな投資家には全く向かない戦略と言えます。

まあこのベータが低くて、値動きが相対的に小さいという特徴は、リスクを嫌う投資家からすると好ましいプロファイルと捉えることもできるかもしれません。

高配当株式投資の特徴まとめ

以上、高配当株式投資の特徴をまとめると以下のようになります。

  • それなりの配当が定期的にもらえてうれしい気持ちになる
  • 過去のパフォーマンスが良好
  • 下げ相場に強いが上げ相場には弱い
  • 配当の払い出しにより複利効果が薄れる

なんというか、個人的には高配当株式投資は毎月分配型の投信のような人間の認知の歪みに支えられている面があると思っています。

確かに配当がチャリンチャリン入ってくるのはうれしいのですが、それは同時に税金により複利効果を棄損しているのです。

この問題は、低コストで配当を支払わない高配当株式戦略のファンドを購入することで解決されると思われますが、おそらくチャリンチャリン効果がないと、個人投資家には売れにくいのではないかという気がしています。

一方で、高配当株式は過去に良好なパフォーマンスを記録しているため、複利効果を多少棄損したところで別にかまわないという見方もあります。

いずれにせよ、戦略の特徴をしっかりと理解した上で、実行していくことが重要かと思います。

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