アクルーアル(会計発生高)で危ない企業を見破る。その定義と活用方法

会計アクルーアルは会計用語の1つです。

日本語では会計発生高と訳されることもありますが、これだけだと何のことかさっぱりわかりません。

端的に言うと、アクルーアルは企業の会計上の利益と実際に生んだキャッシュフローとの差を表します。

長期的には利益とキャッシュフローはバランスし、アクルーアルは概ね0になるのですが、単年度で見ると両者にはズレが発生します。

そしてこのズレがその企業を見る上で重要なポイントになります。

ここではアクルーアルを使った危ない企業を見極める方法をご紹介します。

アクルーアルとは

アクルーアルとは、会計発生高と日本語では訳されます。

これだとほとんどの人には全く分からないと思います。

平たく言ってしまうと、アクルーアルは企業の生み出した利益とキャッシュフローの差として定義されます。

アクルーアル=利益ーキャッシュフロー

企業の生み出すキャッシュフローと利益は同じでは?と思う方がいるかもしれませんが、両者が一致することはまずありません。

キャッシュフローというのは、実際にその企業に入ってきた(もしくは出て行った)現金を示します。

一方の利益は、会計のルールに則って売り上げから費用やら減価償却やら税金やらを差し引いた残りの数字です。

つまり利益というのは、ある意味架空の数字で、実際にその分の現金が企業に入ってきているわけではないのです。

キャッシュフローと利益にズレが生まれる要因

キャッシュフローと利益にズレが生まれる要因は多々ありますが、代表的な要因として以下のようなものが挙げられます。

  • 減価償却
  • 掛け金

減価償却

減価償却は、例えば設備投資をした際にその投資額を複数年に渡って償却することを言います。

つまり、現金は、設備投資をした際に出て行っているのですが、それを数年に渡って償却していくため、両者には差が生まれます。

例えば100億円の設備投資を、10年に渡って定額で償却する際には、

1年目:キャッシュフローー100億円、減価償却ー10億円

2年目以降:キャッシュフロー0億円、減価償却ー10億円

となり、特に2年目以降は減価償却分だけ常に利益が10億円減った状態になります。

言い方を変えると、2年目以降はアクルーアルはマイナスになります。

掛け金

掛け金は平たく言うと、モノを売ったり買ったりしたときに、直ぐに現金で支払うのではなく、将来のいつまでに支払う約束をするということです。

会計上は掛け金が立った段階でバランスシートに計上されますが、実際にはまだ現金化されていないという状態が発生するわけです。

この計上のタイミングと、実際のキャッシュの動きのタイムラグがアクルーアルを生む要因となります。

これら以外にも、アクルーアルの発生要因はありますが、わかりやすい例として減価償却と掛け金を挙げました。

アクルーアルで会社の会計操作の可能性がわかる

もう一度アクルーアルの定義に戻ると、

アクルーアル=利益―キャッシュフロー

です。

つまり、利益に比べキャッシュフローが小さいとプラス、逆だとマイナスとなります

アクルーアルがプラスは危険信号

長期的に見ると、利益とキャッシュフローは概ねバランスします。

つまり、帳簿上の利益とキャッシュフローは計上のタイミングの違いにより差分が生まれますが、長期的にはこの差分が解消されるため、両者はバランスするのです。

しかしながら、中には利益がキャッシュフローより不自然に多い会社が存在します

このような会社は要注意です。

利益は操作可能である

利益というのはあくまでも会計上の概念の為、ある程度操作することが可能です。

例えば利益を平準化するために、今年は儲かりすぎたから費用を多めに計上して利益を抑え、来年に利益の一部を回そうということも可能なのです(これは粉飾ではなくあくまでも会計のルールの中でできることです

キャッシュフローの操作はほぼ無理

一方のキャッシュフローは、操作することが困難です。

キャッシュフローはその名の通り、実際のお金の流れを表しているため、ごまかしがきかないのです(もちろん裏帳簿などをつければ可能ですが、これは違法です)

アクルーアルが多いのは利益操作の可能性が疑われる

このように、利益は操作が可能な一方、キャッシュフローの操作は困難です。

ここでもし経営者が利益を操作して膨らませたらどういうことが起こるでしょうか?

式を見てわかる通り、アクルーアルが大きくなるのです。

つまり、アクルーアルが大きい企業というのは、利益操作の可能性が疑われるのです。

もちろん操作をしなくてもアクルーアルが大きくなることもありますが、ここでのポイントは不自然にアクルーアルが大きくないかということです。

例えば、

  • 赤字すれすれの企業でアクルーアルが大きい⇒赤字にならないように操作している
  • アクルーアルが大きな期が続いている⇒会計操作が恒常化している

といったようなケースは、利益の信頼性に疑いの目を向けるべきです。

利益のみではなく、アクルーアルも見る(つまり利益とキャッシュの両方を見る)という視点は、個別株投資においては重要なポイントになります。

アクルーアルを会社間で比較する方法

アクルーアルの数字自体は、会社の規模に大きく影響されます。

売り上げの大きい大企業ほど、アクルーアルの絶対値も大きくなります。

そのため、企業間でアクルーアルの比較を行う際には、規模を調整する必要があります。

具体的には、アクルーアルを総資産で割った数字を使うのが一般的です。

調整アクルーアル=アクルーアル÷総資産

大企業のアクルーアルの数字を見て大きいじゃないか!と思っても、総資産で割ると実はたいしたことがないということは多々あります

一方で、中小企業でアクルーアルは小さいと思いきや、総資産で割ると実は相対的に大きいということも多々あります。

アクルーアルを見る際には、このように規模を調整することがポイントです。

なお、一般的な傾向としては、大企業よりも中小企業の方が利益操作が疑われるケースが多いです

中小企業の方がガバナンスがしっかりしていなかったり、外部からの目が厳しくなかったり、経営そのものが厳しかったりという背景がそこにはあります(もちろんきちんとした中小企業もたくさんあります)

アクルーアルの活用方法のポイント

最後に、アクルーアルの活用方法をまとめます。

まず、アクルーアルは、

アクルーアル=利益ーキャッシュフロー

と定義されます。

大きな設備投資などを行い、キャッシュが出て行った場合にはアクルーアルがプラスになることがありますが、そのような場合を除くと基本的にはアクルーアルは負の状態が一般です。

アクルーアルを見る際には企業の規模を調整する必要があり、アクルーアルを総資産で割った数字を使います。

この数字が大きい場合は、利益操作が疑われるため注意が必要です。

もし利益操作が行われているのであれば、いずれ逆方向の数字が出てくることになり、その際に株価が大きく下落したり、最悪の場合その会社が倒産したりします。

銘柄選択の際には、是非アクルーアルにも注目することをおすすめします。

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