為替マーケットには特徴的な振る舞いが見られます。
それはトレンドフォローと呼ばれるものです。
基本的に各資産の将来的な値動きは予測不可能と言われています。(いわゆるランダムウォーク仮説)
しかしながら、こと為替においては、自己相関が存在する、つまり過去のトレンドが継続する傾向が見られます。
ここではこのトレンドフォローという現象とともに、その発生するメカニズムをご紹介します。
為替のトレンドに逆らうな
トレンドフォローとは、ある方向に動き出すと、その動きがしばらく継続する傾向のことをいいます。
日本円で言えば、円安になれば更に円安が続き、円高になれば更に円高が進むことを指します。
過去を振り返ってみますと、サブプライム危機の後の円高、その後安倍新政権誕生後の円安が顕著な例として挙げられます。
具体的にはチャートを見るとわかりやすので以下に記載します。
こちらは2006年からのドル円の推移です(出所はヤフーファイナンス)
このチャートみてわかる通り、為替には明確なトレンドというものが存在します。
もちろん短期的には(日次など)どちらに動くかわかりませんが、中長期的にはどちらか一方に偏った動きをする傾向があります。
上のチャートでは2012年頃までは円高、それ以降は円安とキレイにトレンドが表れています。
このように、為替のトレンドというのは何年にもわたって続く傾向があるため、トレンドに逆らって投資を行うのは賢明ではありません。
為替マーケットに関してはトレンドに逆らうなが鉄則となります。
特に逆張りが推奨される株式とはこの点で根本的に異なる資産です。
株式投資のノリで為替に逆張りで挑むと痛い目にあいます。
トレンドが発生する要因
なぜ為替マーケットで長期的なトレンドが発生するかについては様々な考え方があります。
ここでは代表的なものとしては、
- 実需による資金フロー
- 中央銀行による政策の影響
- 個人投資家の投資行動
の3つをご紹介します。
実需によるフロー
実需によるフローに関しては、経常収支が代表的な指標になります。
経常黒字国(ざっくりいうと、国外での稼ぎが多い国)の場合、継続的に自国の通貨を買うフローが発生するため、自国通貨高が継続する傾向が見られます。
貿易収支
経常収支の内、特に貿易収支の黒字は基本的に自国通貨買いの圧力となるため、特に注意してみる必要があります。
貿易により得られた収益は基本的に円に換算されるためです。
所得収支
所得収支に関しては、必ずしもすべての収益が自国に還流されるわけではありません。
もちろん海外子会社の配当や、海外へ投資するファンドの配当金などは円へ還流するため円高要因になります。
一方で、海外で稼いでその収益を海外に置いておく、もしくは再投資する場合には円買いのフローは発生しません。
そのため、所得収支も重要ではあるのですが、その額全てが円高要因になると考えるとミスリードになります。
東日本大震災の影響
日本円に関しては、東日本大震災後に資源の輸入が増え、貿易赤字となったことも昨今の円安に関係したと考えられています。
ただ資源価格の調整や輸出の増加に伴い、ここ数年は貿易収支が再び黒字へと転換しています。
そのため、どこかのタイミングで円高へとレジームがシフトするのではないかと考える人もいます。
中央銀行による政策
中央銀行の政策に関しては、中央銀行の緩和政策により為替が安くなる方向に動くのが代表的な例となります。
中央銀行がマネーを大量にマーケットに放出すると、その国の通貨の価値が下がり、通貨安につながるという経路ですね。
黒田日銀総裁による大規模な金融緩和は記憶に新しいですが、まさに日銀に逆らうなというのが為替相場でも重要な格言となります。
もちろん為替は各国との相対間で決まるものですので、日銀のみならず、FRBやECBといった海外の中央銀行の動向も非常に重要となります。
個人投資家の動向
個人投資家は金利がとても好きです。
金利が低い国より高い国の通貨に投資する方がほとんどです。
日本という国は低金利の国ですので、高金利を求めるとその資金は海外の通貨へと向かいます。
つまり、円安要因となるのです。
この個人投資家が海外の通貨へ投資し、それがうまくいくと更に投資をしたり、それを見ていた人が自分も儲けようと投資したりしてどんどんと投資の輪が広がっていきます。
この群集心理のようなものがトレンド(この場合は円安)を発生させる要因の1つとされています。
ただ、為替というのは移り気なもので、しばらく円安が続いても、円高になる時には急に訪れます。
そして、大きなレバレッジをかけていた投資家はこの変化に対応できず、瞬殺されるということがしばしば起こります。
為替はトレンドに乗ることは重要ですが、ずっと乗り続けていられるわけではないということですね。
為替に関する本
日本人は為替が大好きなのか、ちまたには為替の本であふれかえっています。
中には至極まっとうな本もありますが、その多くはジャンクな個性的な本です。
個人的なお勧めは、以下の「弱い日本の強い円」という本です。
内容は少し古いですが、為替マーケットを理解するのに非常に優れた本であると思います。
ご興味のある方はどうぞ。