インデックス投資家のブログなどで、インデックスファンドのベンチマークは配当込みの方がいい、といった旨の記述を見かけることがあります。
個人的にはこの主張には違和感を覚えることがあります。
対外的に公表しているベンチマークは、あくまでも対外的なものなので、実際に運用上管理しているベンチマークとは別ということが多々あるためです。
インデックスファンドの場合、対外的にベンチマークを配当込、なしのどちらで設定していても、内部的には基本的に配当ありで管理されています。
インデックスファンドは配当も考慮して管理されている
対外的なベンチマークが配当なしになっていると、配当がないものに対して追随しようとしているのでリターンの上で不利なのではないか?と考えている人がいます。
実際にはそんなことはなくて、対外的なベンチマークがどうあれ、内部での品質管理上インデックスファンドは配当も考慮しています。
具体的にはトラッキングエラーの要因として、配当要因として切り出して管理する、というのが通常のやり方になります。
なので、パフォーマンス上配当込と配当なしで、優劣が出るということはありません。
配当あり、なしは気にしなくていい
このように対外的には配当ありだろうがなしだろうが、内部では配当も考慮してインデックスファンドは管理されているため、設定されているベンチマークが配当あり、なしかを気にすることにはほとんど意味がありません。
むしろ、配当なしのベンチマークが設定されているから、これをベースにトラッキングエラーを計算しようとするととてもおかしなことになります(実際は配当ありを基準に運用されているので当たり前ですね)
やってみるとわかりますが、配当分トラッキングエラーは大きく(上方に)かい離します。
ベンチマークを配当なしとする理由
ではなぜファンドによって、ベンチマークが配当込になっていたり、なしになっていたりするのでしょうか。
ここにはルールと見栄えの2つの背景があります。
ルール上はどちらでもいい
対外的なベンチマークを配当込にするか、なしにするかは運用会社の判断にゆだねられています。
要するに運用会社が自由に設定できるのです。
正直なところ、配当が発生する運用をするのにベンチマークを配当なしとするのはとても不親切だと思いますが、ルール上は全く問題がないことになります。
特に、昔は日本株の配当は少なかったこともあり、配当なしでの設定が主流でした。
この流れを汲んでいる場合には、今でも配当なしとするケースが多いようです。
パフォーマンスの見栄えの問題
2つ目の背景は、パフォーマンスの見栄えの問題です。
インデックスファンドの運用にはコストがかかるため、基本的に配当込のベンチマークにはパフォーマンスが劣ります。
ですので月次報告書などで配当込のベンチマークとの対比で見ると、見栄えが悪くなります。
一方で、ベンチマークを配当なしにしておくと、報告書も配当なしとの比較になるため、ベンチマークに勝っているように見え、見栄えがいいのです。
多少のリテラシーがあればこの配当マジックは容易に見破れるのですが、中にはこの違いがわからず、見た目だけで運用の良し悪しを判断してしまう人もいます。
そういう人に対しては、配当なしでの表示の方が都合がいいという側面もあります。
先物の運用の場合には注意
基本的にベンチマークの配当あり、なしは気にしなくてもよいと言いましたが、中には例外があります。
それは先物で運用されている場合です。
昨今では少なくなりましたが、以前は特に外物を中心に先物を使ってインデックスファンドを運用するということがありました。
ここでいう「先物を使う」というのは、キャッシュ管理の為に一部を先物で建てるという意味ではなく、完全に先物を使って運用するという意味です。
この先物によるインデックスファンドの場合、基本的に配当はなしになります(先物に配当はありません)
なので、この場合には配当なしのベンチマークは、本当の意味で配当なしになります。
まとめ
まとめると、インデックスファンドの対外的なベンチマークが配当なしになっていても、内部的には配当部分も考慮して管理されているため、気にする必要はありません。
配当のあるなしはあくまで表記上の問題にすぎません。
一部先物で運用されているファンドの場合には気にする必要がありますが、昨今のいわゆる低コストインデックスファンドは現物で運用されているため、まず気にする必要はないでしょう。
インデックスファンドを見るうえで最も大切なのはトータルリターンです。
もちろんコストやトラッキングエラーも重要な指標ですが、それ以上に重要なのは投資家が最終的に得られたリターンです(当たり前ですね)
この辺りについても、気が向いたらどこかで記事にしたいと思います。