株式、債券の将来的に期待されるリターンはどの程度なのでしょうか。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人、日本最大の公的年金)が内外の株式、債券について期待リターンを公表しているので、今回はそのデータのうち、平成24年版を紹介をします。
(より新しい平成26年版もありますが、こちらはリターンの内訳がわからないため、リターンの内訳を公表している平成24年版をまずは紹介します)
GPIFによる期待リターンの検証(平成24年度版)
国内債券:3%
「期待リターン=長期金利」
としており、この長期金利を3%とおいています。
将来の長期金利水準を2.5~3%と推定し、ここから上限の3%を抽出しています。
短期資産:1.9%
「期待リターン=長期金利ー長短スプレッド(長期金利と短期金利の差)」
としており、長期金利は前述の3%、長短スプレッドは1.1%とおいています。
長短スプレッドは過去の数値の平均水準の0.8%~1.2%程度から期待値1.1%を抽出しています。
国内株式:4.8%
「期待リターン=長期金利+対長期金利スプレッド(長期金利に対するプレミアム)」
としており、長期金利は上述の3%を使用しています。
対長期金利スプレッドは過去の収益率の分布から算出し、1%~4%という幅から1.8%を抽出しています。
外国債券:3.2%
「期待リターン=短期金利+リスクプレミアム(現地通貨での長短金利差)」
としており、短期金利は前述の1.9%を使用しています(日本と外国で同じと仮定されています)
リスクプレミアムは過去20年程度のデータでは1.2%~1.6%程度であり、ここから1.3%を抽出しています。
為替によるリターンは暗黙的に0とおかれているようです。
外国株式:5.0%
「期待リターン=短期金利+リスクプレミアム」
としており、短期金利は前述の1.9%を使用しています。
リスクプレミアムは過去のデータから1.5%~4.6%程度と推定し、3.1%を使用しています。
外国債券同様、為替によるリターンは暗黙的に0とおかれているようです。
まとめ
期待リターン | リスク | |
短期資産 | 1.9% | 3.6% |
国内債券 | 3.0% | 6.5% |
国内株式 | 4.8% | 22.5% |
外国債券 | 3.2% | 12.9% |
外国株式 | 5.0% | 22.5% |
(※注)リスクもGPIFのデータ。1973年~2012年のデータより
個人的な所感
国内債券の期待リターン、ちょっと高くないでしょうか?
確かにかつて(90年代前半)は長期金利が5%を超えることもありましたが、今後は大きな経済成長が見込めず、資金需要がかつての高成長の頃より乏しい中で、長期金利3%はなかなか考えにくいです(ハイパーインフレなどのショックが起これば話は別ですが)
また長期金利が3%に達するためには今より2.8%近く金利が上昇する必要があり、その過程で価格変化による損失がざっくり20%程度発生します(2.8%×デュレーション7年)。
それから期待リターンが国内株式と外国株式でほぼ同じというのも少し違和感があります。
これはおそらく短期金利を国内と外国で同じと仮定している点と、国内債券の期待リターンが高い分、国内株式の期待リターンもかさ上げされている点に起因します。
なお、GPIFはこの期待リターンの算出が目的ではなく、その後の基本ポートフォリオ策定のインプット情報として使用しています。