クオンツに必要なスキルまとめ。プログラミングから英語まで

セミリタイア

クオンツという職種には、専門的なスキルが求められます。

クオンツというとコンピューターおたくのイメージがつきまといがちですが、実際にはコンピューター以外にもたくさんのスキルが必要です。

クオンツという職種自体がニッチなので、求められるスキルもニッチになる傾向があります。

まあ専門性をいかに追及することができるか、ということがクオンツには求められるため、クオンツの業務に関わっていると、自然と多くのスキルが身についているということも多いです。

ここではクオンツに求められるスキルにはどういうものがあるのかをご紹介します。

数学

数学が嫌いな人は、クオンツには向きません。

そもそもクオンツという職種には、

数理的な思考やコンピュータを使ってマーケットをモデリングする

という要素が強いため、数学嫌いだとまず向きません(そもそも数学が嫌いでクオンツになろうという矛盾した人はいないと思いますが・・・)

一方で、数学が大好きである必要があるかというと、そうでもありません。

数学は得意な方である、数字を扱うのが得意だ、というレベルでもそれなりになんとかなります。

高校レベルの数学は必須

具体的にどのくらい数学の知識が必要かというと、高校レベルの数学は必須です。

高校レベルの中でも、数Ⅱ、数Bでは不十分で、数Ⅲ、数Cまでマストです。

要は理系の人が高校で習うことは基礎知識として必須ということになります。

大学レベルの数学も必要

クオンツの中でも、扱う業務によって求められる数学のレベルは変わります。

クオンツをかじる程度であれば、高校レベルの数学でも事足りることもあります。

しかしながら、クオンツとして専門性を発揮したいのであれば、高校レベルの数学では不十分です。

大学の教養レベルの数学は必要になってきます。

高校受験を頑張って大学に入り、大学にではめっきり勉強しなくなったような人は結構ここでしんどくなります。

ただ、やはりクオンツは数学に長けているという点も売りの1つですので、クオンツとして食っていくには、大学教養レベルまでは押さえておく必要があります。

大学院レベルを習得していればエッジになる

では大学院レベルの数学まで必要かというと、必ずしもそうではありません。

ここまでくるとかなりマニアックな世界のため、使う機会はあまりありません。

一方で、機会は少ないものの、中にはこのレベルの数学の知識が求められることもあります。

そのような時、専門性を発揮できれば、自分の強みにすることができます。

つまり、大学院レベルの数学は必須ではないものの、そこまで習得していると替えの利かない人材と見なされ、自分のアピールポイントにすることができます

プログラミング

クオンツという職種は分析を生業としています。

そしてそれなりに大規模な分析を行うためにはプログラミングのスキルが必要になります。

ただよく勘違いされるのですが、クオンツはプログラミングの専門家ではありません

プログラミングはある分析を行うためのツールに過ぎず、必ずしも美しいコードが書ける、素晴らしいスピードでプログラミングが行えるという必要がありません(もちろんこれらのスキルがあればよりよいですが)

それよりも、仮説を立て、それを実証するための分析ができるというレベルであれば、プログラミングのスキル自体はそれほど大きな問題にはなりません

以上を踏まえながら、クオンツでよく使われる言語やソフトをご紹介します。

エクセル

超基本ですが、エクセルのスキルは必須です。

これはクオンツに限らず、金融機関で働く場合には必須ではないでしょうか。

昨今ではエクセルの機能も拡張され、できることが増えているため、エクセルだけで完結する分析も増えています。

とはいっても、やはりエクセルには限界があるため、これだけでは不十分です。

VBA

エクセルに付随するVBAも必須です。

データ分析のみならず、業務の効率化でもVBAはよく使われます。

こちらもクオンツに限らず、ある程度分析的な仕事をする場合には必須のスキルです(ファンドマネージャーやリスク管理など)

あまり多くのデータを扱わない場合、エクセル+VBAでほとんどの業務が完結しているクオンツも中にはいます(少数派ですが)

R

Rはプログラミング言語というよりは、統計ソフトです。

このRは無料で使え、かつ使い勝手がいいため、クオンツの間ではよく使われるツールの1つです。

何百、何千といった個別銘柄を使った時系列分析や最適化などもRで事足りることが多いです。

統計処理ソフトの代表格といったところでしょうか。

Python

近年流行りの言語です。

特に機械学習系のライブラリが充実しており、機械学習・AIの普及に伴い、爆発的にユーザーが増えています。

最近の新人であれば、このPythonをまずは習得することが多いのではないでしょうか。

このPythonと上記のRがクオンツに使われている2大言語(ツール)です。

C言語

C言語は非常に歴史があり、かつ今でもクオンツの間で使われることのある言語です。

初心者にはとっつきにくい言語ではありますが、処理速度が速く、かつコードも頑健性が高いです。

今では使われる頻度は減ってきている印象がありますが、コンピューターの仕組みを理解するうえでも、C言語は大いに役立ちます。

C++

C++は特にデリバティブのプライシングなど、セルサイド側のクオンツに比較的よく使われてきた言語です。

もちろんC同様に現在でも現役です。

Matlab

Matlabは数値計算によく使われるソフトです。

大学などアカデミックな世界での使用頻度が多い印象がありますが、クオンツの現場でも使われることがあります。

こちらは言語というよりもソフトなので、初心者でも比較的とっつきやすいです。

どの言語を使えばいいか

このように、使われている言語は非常に多岐にわたります。

もちろんここで紹介したものが全てではなく、他にも様々な言語やソフトが使われています(例えばSAS、S-Plus、Perl、Ruby・・・などなど)

じゃあどの言語を使えばいいのかというと、どれでもよいというのが答えになります。

既に述べましたが、要は計算したいアルゴリズムを実装できればよいので、どの言語を選ぶかは重要ではないのです。

自分が使いやすい、愛着のある言語を使えばそれでOKといます。

もしくは、その組織でユーザーの多い言語を選べばいいのではないかと思います(周りにユーザーが多いと何かと便利です)

初心者におすすめの組み合わせ

これはあくまでの個人的な意見ですが、全くプログラミングを行ったことがなく、これからゼロから学ぶ場合には、以下のようなスキルの習得をお勧めします。

  • エクセル
  • VBA
  • Python

既に述べたように、エクセルは基本中の基本です。

まずはこれを自分のものにしましょう。

エクセルには非常に多岐に渡る機能があるため、いろいろな関数や数式を操れるようになりましょう。

次にVBAです。

VBAによって効率化されている業務は非常に多いです。

また、VBAにより、より複雑な分析ができるようになります。

アセットアロケーションのようなあまり多くのデータを使わない分析の場合には、VBAで十分ということもあります。

その次がPythonです。

Pythonを使えれば大抵の分析は行えるようになります。

株式の個別銘柄ベースの分析を時系列で行ったり、大量のデータを処理したりといったことも、ほとんどPythonでできてしまいます。

また流行りの機械学習やテキストマイニング、AI系の分析とも相性がよいです。

これからプログラミング言語を学ぶ場合には、Pythonをお勧めします。

マーケットの知識

クオンツの職務は端的に言うとマーケットを観察し、その特徴をモデリングすることなので、マーケットの知識は必須です。

そもそもマーケットがどのように動くのかを理解しないことにはモデリングのしようもありません。

ただ、このマーケットの知識に関しては非常に個人差が大きいです。

ファンドマネージャーを兼ねているようなクオンツの場合にはマーケットをよく見ている人も多いですが、一方でマーケットの動きには無頓着で、日々何が起こっているかを全くフォローしていないような人もいます。

特に、ITや数学に興味を持ってクオンツになったような人の場合、興味の対象がマーケットよりも数理ファイナンス的なことや、プログラミング技法といったエンジニアリング的なことに偏りがちです。

これはこれで悪いことはないのですが、やはり実際に使われる運用のモデルを作ろうとした場合には、マーケットの振る舞いはある程度理解しておく必要があります。

あまりに机上の空論でモデルを作ってしまうと、現実世界では全然ワークしませんでしたということにもなりかねません。

そういった意味で、ITや数学的なスキルとマーケットに対する感性のバランスが求められるとも言えます。

英語

英語はクオンツに限らず、昨今のビジネスマンには必須のスキルでしょう。

また金融の世界はグローバル化が著しいため、英語が話せるということがアドバンテッジではなく、英語を話せないということが足かせになるような世界になってきています。

そういった意味では、英語はやっておくに越したことはないです。

クオンツでは特に読むことが多い

クオンツの世界もグローバル化しているため、英語は必須です。

一口に英語と言っても、読み、書き、話す、聞くと4つの種類があります。

この中でも特に必要なのは読むスキルです。

クオンツにサーベイ(調査)はつきものです。

このサーベイを行う際、重要なソースが論文です。

そして、ファイナンスの総本山は米国のため、ほとんどの論文は英語で読むことになります。

例えば、あるテーマについて分析したり、論文を書いたりしようとすると、10本以上の関連論文を読む必要がある場合もあります。

このように、英語を読む機会は非常に多いため、クオンツにとっては必須のスキルとなります。

まあ実際にはガツガツ読んでいるうちに大抵は自然と身についてきますが

スピーキングとリスニングも大事

リーディング程ではないですが、話せる、聞けるということも大切です。

クオンツは基本的にデータを分析する仕事なので、国境を選びません。

そのため、案件は日本物に限らず、グローバルに存在します(ここは属する会社によっても異なる)

グローバルな分析を行う際には、海外拠点の外人と連携したり、セルサイドのアナリスト(外人)と議論したりする機会が多くなります。

英語が全くできないと、このような分析を行うことはできず、自分の可能性を狭めてしまうことになります。

他国のクオンツとの競争

更に切実なのは、他国(特に米国)とのクオンツとしての競争です。

クオンツは基本データがあれば地域に限らず分析できるため、国境の壁が薄いです。

そのため、昔に比べ、明らかに外国のクオンツと勝負をする場面が増えてきています。

海外(特に米国)のクオンツはとても優秀です。

もちろん個人差は大きいですが、基本スペックは

  • 理工学系の有名大学のPh.D
  • もちろん英語はペラペラ
  • 数学とコンピュータにめっちゃ強い(これは当たり前ですが)

といったところで、特にPh.D保有者が多いことが特徴です。

こういう人材と競争していくこと自体がなかなか難儀ではありますが、そもそも英語ができないと競争の俎上にも上がらないということになります。

うまく説明する力

例えば素晴らしい分析ができたとします。

しかしながら、それをうまく伝えることができないと、その分析の素晴らしさが相手にはわかりません。

この相手にわかってもらう能力(つまり説明力)はとても重要です。

とにもかくにもクオンツはデータばかりをいじって、コミュニケーション能力の乏しい人が多いと思われがちですが、一流と言われるクオンツはほぼ例外なくコミュニケーション能力が高いです。

やはりどんな素晴らしいことをしても相手に伝わらないと意味がないのですね。

もちろんここでいうコミュニケーション能力は相手と気軽に打ち解けるとか、パーティで輪の中心になるとかそういった類のものではありません

あくまでも自分の行った分析について、相手にわかりやすく説明できるかどうか、ということです。

中には難しいことを難しく説明する人もいますが、こういう人は長期的に見てクオンツには向きません。

難しいことをやっていながら、それを簡潔にかつわかりやすく説明できるというのが一流の証のようなものになります。

知的好奇心

クオンツは好奇心旺盛でないと務まりません。

ファイナンスの世界は新しいことは次々とやっていくるので、タイムリーにそれらをキャッチアップし、モデルに組み込んだり、また新しい分析手法を習得したりといったことを絶えず行っていく必要があります。

このようなことは好奇心がないと続きません。

やらされている感たっぷりで仕事をしていると、こういったことに無頓着になり、いつのまにか自分の知識やスキルがガラパゴス化しているという事態に陥ります。

ファイナンスや分析手法、先端の研究といったことに対する絶え間なき好奇心はクオンツを続けていくうえで重要なスキル(というか特性)になります。

まとめ

いろいろ書きましたが、クオンツに必要なスキルをまとめます(一部特性も含む)

  • 数学
  • プログラミング
  • マーケットへの興味、関心
  • 英語
  • 説明力
  • 知的好奇心

この中で最も重要なのは、最後の知的好奇心です。

やはりこれがないとこの仕事は務まりません。

クオンツというのは、嫌々やるような仕事ではないのです。

やりたい人はたくさんいて、その中で(運よく?)選ばれた人がなれる職種なのです。

そして選ばれた人というのは、往々にしてやる気に満ちていて知識に対して貪欲です。

そういった人々の中で、一人前と認められるためには、「好きでやっている」部分がないと務まりません。

私の経験では、クオンツを嫌々やっているような人はほとんど見かけたことはありません(中には事故のような配属で場違いな人を見かけたこともありますが・・・)

最低限必要なスキルを備えており、知的好奇心に満ちている。

これが基本的なクオンツ像ではないかと思います。

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