外国資産へ投資する際には2つの選択肢があります。
為替ヘッジをするかしないかです。
通常は為替ヘッジをしないで投資をする方が多いのですが(資産にもよりますが)、マーケット環境によっては為替ヘッジをした方が運用効率を上げることもできます。
ここでは、外国資産へ投資する際に、為替ヘッジをするメリットとデメリットをご紹介します。
為替リスクをヘッジするメリット
為替のリスクを回避でき、リスクを下げられる
為替は基本的にゼロサムゲームです。
つまり期待リターンは0です(正確には短期金利相当の期待リターン)。
これは為替リスクをとることにより収益が得られるわけではないことを示しています。
考えてみればわかりますが、あなたがドルを買った場合には、同時に売った人がいます。
そして、売った人と買った人の損益はトータルで0になります。
ここが為替リスクの報われないところで、株式のようにリスクを取ることでリターンが見込めるという構造が為替には存在しません。
前置きが長くなりましたが、要するに為替リスクには基本的にメリットがないのです。
中リスクノーリターンが為替の本質です。
ですので、為替リスクをヘッジし、この報われないリスクを排除することはとても理にかなった投資行動です。
シャープレシオ(運用効率)が上がる
上記の通り、為替リスクはとっても期待リターンが上がるものではありません。
これは、裏を返せば為替リスクを排除することで、トータルのリスクが低減するということです。
そもそも期待リターンがないものをヘッジしても、トータルの(例えば株式と為替の)期待リターンは変わりません。
つまり、リターンが変わらず、リスクが減るため、シャープレシオが向上するのです。
(ちなみにシャープレシオとは実質リターンをリスクで割った「運用効率」を表す指標です)
機関投資家の中でもグローバルマクロのような世界の様々な資産に投資する戦略の場合には、基本的に為替はヘッジして考えます。
そして為替の部分についてはオーバーレイする形で為替そのものを別に評価します。
要は自信がなければ為替リスクはとらないわけです。
理由は上記のようにその方が運用効率がいいからです。
為替リスクをヘッジするデメリット
ヘッジコストがかかる
為替ヘッジのデメリットとして真っ先に挙げられるのがヘッジコストの存在です。
ヘッジコストというのは、為替をヘッジする際に自国と他国の短期金利の差がコストとして差し引かれることをいいます。
ただ、ヘッジコストはいわゆる「コスト」とは別物で、意味合いとしては金利水準調整項といいった方が適切です。
2国間で金利差がある場合には、その金利差を埋めるように裁定が働き、どちらの通貨に投資をしても優劣がつかなくなるわけです。
この差を埋めるものがヘッジコストになります。
なので、例えば日本の短期金利が米国の短期金利より高い場合には、為替をヘッジするとむしろ利回りは上昇します(ヘッジプレミアムとも言います)
例として、日本の短期金利が3%、米国の短期金利が1%とすると、
3%-1%=2%
となり、ドル円をヘッジすることで2%利回りが上乗せされるのです。
つまり、ヘッジコストというのは、信託報酬のようなコストとは全く別物で、国の間の短期金利の差を調整するためのものなのです。
なので、例えば上の例の逆で、日本が1%、米国が3%とすると、2%分の金利が削れる形になりますが、これは正確にはコストではなく、2国間の金利差を調整するためのものです。
確かに日本の金利はずっと低い状態が続き、為替ヘッジをする際にはヘッジコストがかかるのを嫌気する気持ちもわからないではありません。
ただ、為替のヘッジコストについては、ただの「コスト」と認識するのではなく、上記のように優劣をなくすための調整項と捉えないと本質を見失ってしまいます。
最後に補足しますが、以上の理由により、ヘッジコストはデメリットというよりは、ヘッジするために当たり前に必要なものなのです(デメリットの項目でこんな結論で恐縮ですが)
為替によるリターンが狙えない
当たり前の話ですが、為替をヘッジすると、為替によるリターンは狙えません。
為替の方向感が分からない場合にはヘッジしてしまった方がよいのですが、為替の方向感に賭けたい時にはヘッジをしてはダメです(当たり前ですね)
つまり為替によるリターンを狙いたい、狙える自信がある、狙う方法を知っている場合には、為替ヘッジはデメリットになります。
既に述べたように、全体としては為替はゼロサムなので、コンスタントにリターンを狙うのは難しいと思いますが、マーケットには往々にしてゆがみが発生することがあるため、そのような時を狙うというのはありだと思います。
まとめ
外国資産に投資する際に、為替ヘッジをするメリットとデメリットを述べましたが、読んでいただいてわかる通り、基本的にはデメリットよりメリットの方が大きいです。
やはり為替リスクはゼロサムなので(本当にここにつきます)、このリスクをヘッジすることは理にかなっているのです。
一方で、日本のような低金利の国から外国に投資する際には、ヘッジコストがかかり、これが心理的に影響があるのもまた事実です。
ヘッジコストは確かに足元の水準が概ね正確にわかるため、この分の金利が持っていかれるのは心理的に抵抗があるのはわからないでもありません。
ただ、一方で、短期金利の差というのは、長期的に為替水準によって調整されます。
つまり、目先のヘッジコストが2%だとすると、将来の為替リターンは理論上は-2%となるのです。
要はヘッジしてもしなくても、期待リターンに変化はないということです。
問題は将来の為替リターンは足元では見えないため、どうしても明確に見えてしまうヘッジコストに気を取られてしまうことです。
既に述べましたが、グローバル投資をしているプロ(特にグローバルマクロ戦略)は基本為替はヘッジします。
そして為替の部分は別に分析し、魅力的な通貨があればそこにピンポイントに投資します。
目先のヘッジコストにとらわれず、是非とも長期的な展望を持った投資をおすすめします。