資産配分比率(アセットアロケーション)を決める具体的手順と問題点

金融

リターンの約9割は資産配分により決まると言われています。

つまり、各資産の基本配分比率(アセットアロケーション)をどうするかということで、トータルリターンのほとんどは決定されます。

ここでは、ポートフォリオの基本配分比率を決めるための具体的な方法及びその問題点をご紹介します。

資産配分比率を決める手順

資産配分比率を決める方法はいくつかありますが、以下が教科書的かつオーソドックスな方法の手順になります。

  1. 投資対象資産を決める
  2. 許容できるリスクを決める
  3. 対象資産の期待リターン、リスク、相関係数を決める
  4. 許容できるリスクに対し、期待リターンが最大となるポートフォリオを計算する

順番に説明します。

1、投資対象資産を決める

まずは投資対象資産を決めましょう。

日本株と債券だけなのか、外国株式も含めるか、新興国株式も含めるかなど、いろんな組み合わせがあります。

一般的には投資対象が多いほど、運用の効率は高くなると言われています(ブレス(投資機会)が増えるため)

かつての年金運用では日本株式、外国株式、日本債券、外国債券の4つを伝統的資産とし、この4つを中心に投資を行ってきましたが、昨今ではより広いアセットクラスへの配分も行われています。

2、許容できるリスクを決める

自分がどのくらいのリスクを許容できるのかを決めましょう。

年率10%なのか、5%なのか、このあたりの感覚は個々人の取れるリスク量によります。

例えば、リスクが年率10%であれば、1年間での損失が20%くらいまではなりうるという感覚になります(2σのイベントを仮定、期待リターンは無視)

ちなみに株式のインデックスの場合にはリスクは概ね20%程度になりますので、ここまでリスクをとれない方は、他の資産への分散が必要になってきます。

3、対象資産の期待リターン、リスク、相関係数を決める

1で決めた投資対象資産の、それぞれの期待リターン、リスク、相関係数を決めましょう。

もしよくわからなければ、年金基金などが出している数字などを参考にすればいいでしょう。

株式・債券の期待リターンの水準(GPIF2014年版)
株式・債券の期待リターンはどの程度なのでしょうか? 国内最大の運用機関であるGPIFが株式と債券の期待リターンを公表しています。 ...

ネット上を探せば数字は転がっています。

4、許容できるリスクに対し、期待リターンが最大となるポートフォリオを計算する

3までで準備は終わり、ここでいよいよ資産配分比率を求めます。

インプットは3で求めた各資産の期待リターン、リスク、相関係数で、2で決めた許容できるリスクに対し、期待リターンが最大となるポートフォリオを計算します。

例えば、許容リスクを10%とするなら、リスク10%で期待リターンが最大となるポートフォリオを計算することになります。

このような計算をするには最適化が必要ですが、エクセルのソルバーなどを使えば簡単に答えを出してくれます。

これで、理屈上は基本配分比率(ポートフォリオ)が求まることになります。

この手順で基本配分比率を求めても必ずしもうまくいかない

以上が基本配分比率を求める具体的な手順になります。

おそらく教科書的にスタンダードなやり方で、手順としてもそれなりに説得力がありそうなものですが、実はこのやり方でやってもなかなかうまくいかないことが多いです(既にやられたことのある方は経験があるのではないでしょうか)

ちなみにここまでの資産配分を決める手順は、運用会社の新人などによくやらせる類のものになります(つまり基本中の基本です)

そして、このやり方ではなかなかうまくいかないということも同時に学ぶことになります。

ではなぜこのやり方がうまくいかないのでしょうか、どこに問題があるのでしょうか、それを以下では紹介していきます。

(問題があるにしろ、ここで書いたような手順は確立された型のようなものなので、知っておいて損はないです)

基本配分比率を決める手順の問題点

上記の方法で、理屈の上での基本配分比率は求まるのですが、実際にやってみるとうまくいかないことが多いです。

ポートフォリオの偏り

よくあるパターンとしては、ポートフォリオが極端に偏ってしまうということです。

例えば、6資産を投資対象としているのに、2資産のみのポートフォリオが出来上がってしまったなど。

確かに数字上で最適化はされているのですが、さすがに6資産に投資しようとしているのに、2資産だけに投資しなさいというのは直感的に違和感を感じます。

むしろ広く資産が分散されたポートフォリオが出来上がることは稀で、大抵このような偏りのあるポートフォリオが出来上がります。

インプットへの依存性

こうなってしまう背景は、インプットの値に優劣があるからです。

ではインプットを修正して再度最適化計算をすると、今度は違った資産で偏りが見られるという状態がよく発生します。

要は最適化計算というのは、ほんのわずかでも有利な資産を、極限まで入れようとするため、インプットにわずかな違いしかなくても、そのわずかな違いによって結果が大きく異なってしまうという問題を孕んでいるいるわけです。

制約条件を加える

このような偏りに対処するために、制約条件を加えるということがよくやられます。

例えば、各資産が最低10%以上含まれるようにするといった感じです。

このような条件を加えることで、見かけ上のポートフォリオは分散されます。

一方で、条件を加えるほどにインプットの情報が失われてしまいます。

つまり制約条件のきつさと、インプット情報の喪失にはトレードオフの関係が存在するのです。

ですので、あまりにも制約条件を多くしてしまうと、結局何をやりたかったのかよくわからなくなってしまいます。

この辺りは、インプットの値と制約条件と出来上がりのポートフォリオの3つのバランスを見ながらコントロールしていく必要があります。

簡便的な資産配分比率決定方法

このように最適化計算というのは、言葉だけ聞くとなんだかすごいことをやっているような気がしますが、実際のところこのような問題があるため、それほど使い勝手がいいわけではありません。

個人投資家であれば、このような凝ったことをしなくても、より簡便的な方法で十分かと思います。

個人投資家のための資産配分決定方法

リスクを基準に資産配分を決める

一番わかりやすくおすすめなのは、リスクに着目する方法です。

許容できるリスク量を決め、そのリスク内に収まるある程度資産分散の効いたポートフォリオを選ぶという方法です。

この方法であれば、期待リターンも必要なく、あくまでリスクと相関さえあれば計算できるのでとても楽です。

ツールもエクセルがあれば十分計算できます。

期待リターンを基準に資産配分を決める

もう一つの方法として、期待リターンをベースに資産配分を決めるという方法もあります。

つまり、想定している期待リターンを達成できるように資産配分を決定し、その結果としてリスクも決まるというやり方です。

ただこの方法は、リスクより推定の難しいリターン使い、また実際の計算にリスク、リターン、相関係数の3点セットが必要なため、あまりおすすめありません。

将来の期待リターンをある程度正確に予測できる自身のある方にはいいかもしれませんが、普通の個人投資家であれば、上記のリスクに注目する方法で十分ではないかと思います。

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